愛花さんと距離を置いて、三週間が過ぎていた。あの日から『ラビリンス』には行っていない。今日は平日だから愛花さんも来ていないだろうと思い、その扉を開いた。
「いらっしゃ……」
そこで徹子ママの言葉が詰まる。
「徹子ママお久しぶりです」
そう言うと、徹子ママが目に涙を溜めながら唇を震わせた。
「あんた!毎週来てたくせに、急に来なくなるんじゃ無いわよ。心配するでしょうが」
怒っているが、それは心配していたのだと分かる言葉で胸が熱くなった。
「すみません。少し来づらくて、足が遠のいてしまいました」
「何があったのか知らないけど、あの子も来ていないのよ。ずっと心配していたんだから」
「愛花さんも来ていないんですか?」
「ええ、来ていないわ。それで何があったの?」
僕は徹子ママに三週間前の話をした。それを黙って聞いていた徹子ママは大きく溜め息を付いた。
「あの子は人を愛せないのよ」
「知っています」
「歩夢くん、片方の想いが強ければ強いほど相手の負担は重くなるのよ。追い詰める結果になるわ。全ての人がそうじゃないけど……でもね、分かる?好きを押しつけてはダメよ。あの子は演技が上手いから騙されないで、愛されていると錯覚してはダメよ。あの子は愛せないのだから」
愛花さんが演技をしている?
僕に好意があるという演技を?


