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僕の何がいけなかったのだろう。
愛花さんの愛はいらないからと、僕の愛を沢山上げた。愛花さんから愛がもらえなくてもそれでいい。そう思っていた。僕があげられるモノなら何でもあげたい。愛花さんが僕を愛せなくても良かった。僕が愛せればそれで良かった。
それなのに……。
あの人は僕から離れていった。
『ごめんね。歩夢』
愛花さんはそう言った。
僕を歩ちゃんではなく、歩夢と呼んだ。
本来なら名前の呼び方を変えるのは親しくなった時だろう。関係性の変化に喜ぶところなのだが、これは愛花さんからの拒絶だろうか……。名前の呼び方一つで、僕は地獄にまで落とされた思いだった。
しかも距離を置くって?
嫌だ……離れたくない。
あの時、離れて行く愛花さんに『ごめんなさい。置いていかないで』と言いたかったのに声が出なかった。涙を流すだけで声を出すことが出来なかった。あまりにもショックで、口腔内の乾きと喉の奥がヒリついて言葉が出せなかった。
あの時……謝ったら愛花さんは戻ってきてくれたのだろうか?
違う……きっと謝っても、愛花さんは僕から離れた。
泣いてすがっても、愛花さんは僕の手を離しただろう。


