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「愛花さん好きです。大好きです。僕の瞳にはあなたしか映らない」
今日もバラの花束を手に、私の前で跪きながら愛を囁いているのは歩ちゃんだ。ここは公園なのだが、かまうこと無く歩ちゃんが愛を乞う。私はそっと手を伸ばし、花束を手にすると笑顔を見せた。すると歩ちゃんの目が嬉しそうに弧を描き顔が赤く染まる。
ごめんなさい……。
私は心の中でそう呟きながら口角を無理矢理上げる。幸せな演技をしなくては……。
そんな私の心情とは矛盾して、歩夢が溢れんばかりの愛情を注いでくる。
その想いに比例するように私の心の重りは重くなっていった。それはもう立っていられないほど重くなり、前に進めないほどになっていた。
「歩ちゃん……ごめん。少し距離を置こうか……」
「えっ……」
私の顔を見たまま目を見開いている歩ちゃんに、私はもう一度同じ言葉を継げた。
「少し距離を置こう」
それを聞いた歩夢の瞳からハラハラと涙がこぼれ落ちた。何も言わず目を見を見開いたままの状態で涙をこぼす歩夢の姿に、胸が締め付けられる。それでも私は今日、この言葉を言おうと決めてきたんだ。私達には時間が必要だ。このまま一緒にいることは出来ない。このまま一緒にいたらきっとどちらかが潰れてしまう。
「ごめんね。歩夢」
私は涙を流す歩ちゃんを一人残し、その場を後にした。


