愛花さんは胸ぐらを掴まれ殴られようとしていた。僕は必死に走り人をかき分けながら前に進むと、ギリギリに所で塚田の拳を掴むことが出来た。良かった。どう見ても今のは愛花さんが自分から塚田をあおり、殴らせようとしていた。
何故?
お願いだから無茶はしないでほしい。
塚田が僕たちをゲイだゲイだ気持ち悪いストーカゲイ野郎と罵る中、愛花さんが帽子を取った。パサリと落ちる髪、サラサラと流れる黒髪は艶々で愛花さんの美しさを引き立たせる。ニコリと笑えば回りからどよめきが上がった。
なんて格好良くて美しい人なんだろう。
まるで愛花さんの描いたシナリオのように物事が進んでいく。
そこに僕の名を呼ぶ人が現れた。
父さん……この人は僕の父でこの会社の社長だ。それは幹部しか知らない事実だった。僕はこの会社を継ぐ気は無いから、いつでも辞められるように社長の息子だと言うことは秘密にしていた。
その社長が現れ騒然とする中、愛花さんだけが凜とした姿のまま立っていた。


