すました顔でそう言うと、顔を真っ赤にした男が掴みかかってきた。
「ふざけんなよ。お前のせいで!」
胸ぐらを掴まれ動けずにいると、誰かが焦った様子で男の手を制した。
「塚田お前、何をやっているんだ」
塚田とはこの男のことだろうか。始めて私はこの男の名前を知った。
「酒賀部長、こいつが悪いんです。こいつが!」
「塚田落ち着け、ここは会社の前だぞ。人の目がありすぎる。一旦落ち着け。とりあえずこっちに来なさい」
酒賀部長と呼ばれた人は、私と塚田を会社のエントランス奥へと連れて行った。
「それで何があった」
酒賀部長が塚田に話を促すと、塚田は私を指さして怒りを露わにした。
「こいつが先週俺の彼女を口説いてきたんすよ」
「ほう。それで彼に掴みかかったと?」
「そうです。だから俺は悪くないんすよ」
塚田は酒賀部長に話しながら密かに口角を上げた。その表情を愛花は見逃さなかった。しかしそれに気づかない酒賀は、愛花に説教でもするかのように口を開いた。
「そこの君、うちの塚田が悪かったね。しかし君にも悪いところがあったのでは?」


