そっとベッドに近づき、歩夢のくちびるにキスを落とした。カーテンの隙間から夕日が差し込み病室がオレンジに染まる。そんな中で唇を離すと、ベッドに付いていた手を握り絞められた。驚いて自分の手を見ると歩夢の手が私を離さないとばかりに掴んでいた。
「あゆ……ちゃん……?」
歩夢の顔に視線を向けると、歩夢の目がゆっくりと開いていく。
「愛花さん……」
起きたてのかすれた声で歩夢が愛花の名前を呼ぶ。
「歩ちゃん!目が覚めたの?!」
私の言葉を無視して、歩夢が私を見た。
「愛花さん、僕からまた離れるんですか?僕はもう耐えられない。愛花さんが僕の近くにいないのが耐えられないです。僕に対して愛するという演技をさせてしまっていたことは謝ります。もうその必要はありません。だから徹子ママを選んで僕から離れるとか言わないで下さい。お願いですから僕の側にいて下さい」
どうしてここで徹子ママがでてくるんだろう?
意味が分からず黙っていると、歩夢が苦笑いをしてから話を続けた。
「あの日、愛花さんが徹子ママと話しているのこ聞いたんです。私の事を分かってくれるのは徹子ママだけだと言っているのを聞いてしまいました」
あの日、歩ちゃんもあの場にいたんだ……それであの話を聞いていた。
「あれを聞いてどう思った?」
「悲しかった……です」
悲しかったんだ。


