涙の流星群

 それから数十分後。

 奈蔵川河川敷付近のコインパーキングに車をとめたぼくらは、複数のレジャーシートを手で持ち、いざ河川敷へ。

 途中、夜空を見上げると、そこには流星がいくつも流れていて、思わずぼくは足を止めた。

 あぁ、とてもきれいだ。

 けれど、同時にとても切なくなる。
 それはなぜだ?

 ぼくは夜空を見上げるのをやめた。

「……分からない」

 こんなにも流星が観測できるのは、たぶん人生で一度きりだろう。
 そう、一度きりなのだ。

 だったら、愚かなぼくはこの日を絶対に忘れないようにしなくてはいけない。
 たとえ、ぼくらの仲間であるはずの「彼女」を完全に忘れる日だとしても、「彼女」が消える日だとしても……ぼくらの夏が終わる日だとしても、絶対に忘れてはならない。
 忘れることが運命で絶対だとしたら、そんな決められた運命なんか抗ってやる。

 ぼくができる唯一の抵抗は、まさにそれだった。

 やがて、ぼくらは奈蔵川河川敷広場へとたどり着いた。
 河川敷広場だが、ペルセウス座流星群を観測しようという人でいっぱいだった。

 ぼくらはふさわしい場所を見つけ出し、持ってきた星空のレジャーシートを地面に広げ、そこに荷物を置き、各々虫除けスプレーを体にかける。

 準備完了。

 さて、どうする。
 願い事、三回唱えてもいいのだろうか?

 するとそのとき、遙香さんが「せっかくだから、流星群を見上げようよ」と提案してきた。

 ナイス、遙香さん。

 しばらくのあいだ、ぼくらはレジャーシートに寝転び、夜空を見上げていた。

 それで分かったのだが、やはり夜空にはたくさんの流星があちらこちらと姿を見せていて、けれどそれはすぐに消えていった。
 右上から左下、または左上から右下の斜めにかけて吸い込まれるように流れ、そしてそれはすぐに消えていった。
 それはどこを見ても観測できたし、なんなら一秒に五個以上は観測できた。

 当然ながら、ぼくらは流星雨と化したペルセウス座流星群に見とれ、会話という無粋なものなんて一切しなかった。

 それから三十分以上は経っただろうか。
 腕時計を見遣ると、午後九時を少し過ぎたところだった。

 徐々に、けれど確実に……流星の数が増えていったのだ。