涙の流星群

 救出後も夏奈さんは泣きじゃくっていて、見るに堪えなかった。
 ぼくの両親の部屋のベッドで夏奈さんを休ませると、彼女は安心したのか、そこで寝入ったようだった。

 まずは一安心。
 さて、どうしよう。

 リビングのソファにはぼくら家族のほか、遙香さんや海堂さんもいた。
 無論、話し合いをするためである。

 最初の口火を切ったのは、真剣な表情をした姉だった。

「夏奈ちゃん、うちで預かろうと思うんだけど……いいかな」
「そりゃああんた……」

 姉の言葉に対し、母は口ごもる。
 そんな母の代わりに、父が答えた。

「それは無理だ、天音」

 沈黙が流れる。
 しかしこの沈黙、長くは続かなかった。

 姉は口を一文字に結び、それから吠えた。

「どうして? あたし、納得がいかない!」

 姉の反論に対し、父は「考えてもみなさい、天音」と諭すような口調で言い、姉を優しく見つめる。

「今回、遙香ちゃんの両親は夏奈ちゃんのことを忘れてしまった。となると、今におれと奏も夏奈ちゃんのことを忘れてしまう可能性があるはずだ。
 それはもしかしたら、きょうかもしれない。
 そしたら夏奈ちゃんは、今よりもさらに悲しむことになるじゃないか」
「……じゃあ何? 今二人の部屋で寝ている夏奈ちゃんを、あんたは追い出せっていうの?
 それはあまりに残酷よ、最低よ」

 姉は猛反撃。
 これにはさすがの父も閉口した。

 そのとき、遙香さんが口を開いた。

「隼人さん、奏さん。どうか夏奈に居場所を与えてやってください。
 あの子、きっと喜ぶと思います。
 一時的にでも、あの子が喜ぶのなら……その価値は十分にあります。そう思いませんか?」

 見れば、遙香さんの目には涙がにじんでいた。
 ここぞとばかり、海堂さんは父と母に頭を下げて、「ぼくからもお願いします、隼人さんに奏さん」と二人に頼み込んだ。

 父は母を見る。
 母も父を見る。

 やがて父と母はうなずき合い、代表として父が答えた。

「分かったよ、遙香ちゃん。夏奈ちゃんは我々に任せなさい。
 子どもを預かるからには、ちゃんと預かるからね。約束するよ」

 父はニッと笑った。

 すると、見るからに遙香さんは元気になったかと思えば、こんなことを父と母にお願いした。

「それでも夏奈のことが心配なので、わたしもこの家に泊まっていいですか? お願いします」
「いいだろう。
 ――なあ、奏?」
「ええ、隼人さん」

 夏奈さんだけではなく、父と母は遙香さんの居候も許可した。

 当然、この事態にぼくは度肝を抜かしたが、反論しようとは思わなかった。
 なぜって、好きな人が家に泊まるからだ。

 こうして、ぼくら大浦家は彼女たちの居候を受け入れた。