海堂さんからの返信には、このようなことが書かれていた。
「初めまして、翔くん。
ぼくはきみたちを助けたい。
だから、ぼくはきみたちを助ける。
きみたちを救う。
なぜなら、ぼくには幻想事件の被害者を救うという使命があるから。
だから、ぼくは翔くんたちを助け、最終的には救うつもりでいる。
先ほども言ったように、それはぼくの使命だ。
ぼくに任せてくれ。
しかし、勘違いしないでほしいのだが、ぼくの役割は司令塔だ。
あくまでも、現場で動くのはきみたちのほうだから、そこはくれぐれも忘れないでほしい。
で、ついさっきの話だけど、きみたちの情報は天音から色々と聞いているんだ。
そう、色々とね。
いつ頃、きみたちと話すことができるかな。
ぼくのことは気にせず、きみたちだけの都合で、時間と場所を決めてくれ。
そんなわけだから、頼んだよ」
このメールの返信を読んだら分かると思うが、海堂さんはぼくらの期待を裏切らないような優しい人だった。
優しいばかりではなく、彼はぼくらを助けようとしている。
ぼくらを救うことに積極的であり、誰よりも情熱的でもある。
つまり、ぼくらの最大の理解者なのだ。
姉が海堂さんを好きになるのも、なんだか分かる気がする。
それほどまで、海堂さんは人情味のある優しき青年だった。
ぼくが海堂さんからの返信を読み上げると、ほぼ全員からどよめきが起こった。
徹は感心したようにうなり、それから「すばらしい、の一言に尽きる」と海堂さんを褒め称えた。
「この方なら、きっとおれたちを……夏奈を救ってくれることだろう。
でかしたぞ、翔。おれたちの勝利は、もう目前だ」
徹はニカッと笑った。
泣きそうになりながらも、ぼくは大きくうなずいた。
「正直、この進展は大きいよ。希望があるだけで、こんなにも世界は明るくなるんだね」
そうぼくは言ってから、さらに大きくうなずく。
すると、
「何それ、バカみたい」
と思わぬ茶々が入った。
夏奈さんだ。
「さっきと言っていることが違いすぎて、笑えるんだけど。
勝手に自分たちの住む世界をけなしておいて、いざ状況がよくなれば、『世界は明るい』とか……もうさ、いいかげんにしろ、って感じ。
こんなにも世界は明るくなる? はっ、笑えない。共感できない。
だってさ、こんなにも世界はわたしのことが憎いんだよ? わたしの存在をなかったことにしようとしているんだよ? こんなにもわたしは世界のことが憎いんだよ?
わたしから見たら、世界は真っ暗で真っ黒。色なんて、黒の一色だけじゃん。
わたしから見たら、世界は全然明るくない。
まったく希望はないし、希望のようなものも見えてこない。
え、それはわたしだけだって? じゃあ聞くけど、みんなにはさ、この世界がどのように見えるの?
わたしにはこの世界が真っ暗で真っ黒にしか見えないし、ほかに見えるとしたら、それは絶望だよ。
希望じゃない、これは絶望。
みんなにはこの絶望……見える? それとも見えない?
よかったら、わたしに教えてよ。わたし、それが知りたいの。……で、どうなの、遙香。わたしを苛立たせるようなことを言ったら、すぐさま絶交だからね」
色々と負の感情をぶちまけたかと思えば、夏奈さんは遙香さんを質問の回答者として選び、彼女に怒りの矛先を向けた。
いや、それは違うのかもしれない。
もしかすれば、夏奈さんは遙香さんの言葉で救われたいのかもしれない。
この流れで、遙香さんが夏奈さんに酷い言葉を言うとは、やはり思えなかった。
案の定、遙香さんは満点の回答をした。
が、ぼくの予想とは違い、最後は厳しい言葉でもあった。
「結論から言うけど、夏奈が見てしまった絶望、それはわたしにも見えるよ。
ただし、あなたの目から見える絶望は、わたしの目から見える絶望ではないけどね。
いや、これはふざけているんじゃなくてね……要するに、希望や絶望は人それぞれだと思うのよ。
人それぞれ、希望や絶望の見え方や感じ方が違うのだと思うの。
じゃあ聞くけど、わたしの絶望があなたには見える? 具体的にはどういうもの? どれほど大きい? どんな色をしているわけ? どれほど、それはわたしを苦しめ、傷つけるの? ……意地悪な質問だっていうのは分かっているけど、つまりはそういうことだよ、夏奈。
結局のところ、人の感情は世界にひとつだけのもの。同じものなんて、存在しない。
みんな世界にひとつだけの感情を持っていて、それぞれ見え方や感じ方が違うの。
でね、大事なことを言うけど……希望が見えない、そうあなたは言ったわね。
それはあなたが“希望を見ようとしていない”からよ。
いくら、あなたの中に希望があっても、あなたが希望の存在をあると認めなくては、それは存在していられない。
いえ、それはきれいに言い過ぎね。
あなたは希望から目をそらしている。だから、あなたには希望が見えない。というか、あなたは希望を見ようとしていない。
あなた、もっとシャンとしなさい。いいわね、夏奈」
夏奈さんを見ると、彼女は目に涙を浮かべていた。
それは感動の涙か、悔し涙か、はたまた悲しみや怒りの涙か。
しかし、それはすぐに分かった。
夏奈さんは鼻をすすると、それから顔をしかめたかと思えば、唐突に吹き出した。
「遙香ってば、昔から変わらなさすぎ。
その持論、小学生のときに聞いたんだけど。
あんたさ、わたしをうれしくさせて、どうする気だっての。
まったく、これだから遙香は苦手なんだってば」
夏奈さんは詩織さんからティッシュペーパーを受け取ると、それで鼻をかんだ。
まさかの嬉し涙だったようだ。
夏奈さんが鼻をかんだあと、ぼくらは話し合いを再開させた。
「で、海堂さんにはどう返信するのよ、翔。
これはあなた宛に届いたメールなんだから、あなたが考えなさい」
そう環奈はぼくに厳しく言ったが、その言葉には力強い優しさが込められていた。
「時間と場所も、ぼくが決めていいんだね?」
ぼくが環奈に質問すると、彼女は時間が止まったかのようにピタリと停止した。
それから十秒ほどが経過。
環奈は困ったような表情で、徹を見遣った。
おそらくだが、環奈は場所と時間の件を失念していたのだろう。
徹はため息をつくと、おもむろにスマートフォンを取り出し、携帯電話の画面を見ながら「時間は午前九時、場所はカフェレストラン『カレス』」と最低限の情報のみ、ぼくらに伝えた。
ぼくは大きくうなずくと、スマートフォンを握りしめ、早速メールの返信を書き始める。
ぼくがメールを書いているあいだ、遙香さんたちは話し合いを続けていた。
ぼくは遙香さんたちの話し合いに口を挟まず、話し合いの内容を聞くこともなく、集中してメールの返信を書き終えた。
が、いち早くそれを読んだ勇人は「あのう、海堂さんの『堂』が『道』になっていますよ」と誤字を指摘してくれた。
なぜだろうか、勇人からの指摘で誤字を直すのがシャクに障ったぼくは「これでいいんだよ」とムキになってしまった。
すると、見事に詩織さんから「よくありません。今すぐに誤字を直すのです」と正論を言われ、ぼくは泣く泣く誤字を直した。
そのときに聞いた茜の「翔くんったら、酷いね」という言葉を、ぼくは死んでも忘れない。
ぼくが海堂さんに返信してから数分後、海堂さんから「了解。今、きみたちは『カレス』にいるんだよね? だったら、今すぐに向かうよ。待っていてくれ」という返信が来た。
ぼくらはというと、海堂さんがこの「カレス」に現れるまで、ゆっくりと休憩することにした。
ぼくらは大船に乗ったつもりで、救世主の登場を待った。
それから数十分後。
ぼくらの救世主であり、司令塔の海堂さんが「カレス」に現れた。
ちなみに言うと、ぼくの姉、大浦天音を連れた状態で、海堂さんはぼくらの前に現れた。
「初めまして、翔くん。
ぼくはきみたちを助けたい。
だから、ぼくはきみたちを助ける。
きみたちを救う。
なぜなら、ぼくには幻想事件の被害者を救うという使命があるから。
だから、ぼくは翔くんたちを助け、最終的には救うつもりでいる。
先ほども言ったように、それはぼくの使命だ。
ぼくに任せてくれ。
しかし、勘違いしないでほしいのだが、ぼくの役割は司令塔だ。
あくまでも、現場で動くのはきみたちのほうだから、そこはくれぐれも忘れないでほしい。
で、ついさっきの話だけど、きみたちの情報は天音から色々と聞いているんだ。
そう、色々とね。
いつ頃、きみたちと話すことができるかな。
ぼくのことは気にせず、きみたちだけの都合で、時間と場所を決めてくれ。
そんなわけだから、頼んだよ」
このメールの返信を読んだら分かると思うが、海堂さんはぼくらの期待を裏切らないような優しい人だった。
優しいばかりではなく、彼はぼくらを助けようとしている。
ぼくらを救うことに積極的であり、誰よりも情熱的でもある。
つまり、ぼくらの最大の理解者なのだ。
姉が海堂さんを好きになるのも、なんだか分かる気がする。
それほどまで、海堂さんは人情味のある優しき青年だった。
ぼくが海堂さんからの返信を読み上げると、ほぼ全員からどよめきが起こった。
徹は感心したようにうなり、それから「すばらしい、の一言に尽きる」と海堂さんを褒め称えた。
「この方なら、きっとおれたちを……夏奈を救ってくれることだろう。
でかしたぞ、翔。おれたちの勝利は、もう目前だ」
徹はニカッと笑った。
泣きそうになりながらも、ぼくは大きくうなずいた。
「正直、この進展は大きいよ。希望があるだけで、こんなにも世界は明るくなるんだね」
そうぼくは言ってから、さらに大きくうなずく。
すると、
「何それ、バカみたい」
と思わぬ茶々が入った。
夏奈さんだ。
「さっきと言っていることが違いすぎて、笑えるんだけど。
勝手に自分たちの住む世界をけなしておいて、いざ状況がよくなれば、『世界は明るい』とか……もうさ、いいかげんにしろ、って感じ。
こんなにも世界は明るくなる? はっ、笑えない。共感できない。
だってさ、こんなにも世界はわたしのことが憎いんだよ? わたしの存在をなかったことにしようとしているんだよ? こんなにもわたしは世界のことが憎いんだよ?
わたしから見たら、世界は真っ暗で真っ黒。色なんて、黒の一色だけじゃん。
わたしから見たら、世界は全然明るくない。
まったく希望はないし、希望のようなものも見えてこない。
え、それはわたしだけだって? じゃあ聞くけど、みんなにはさ、この世界がどのように見えるの?
わたしにはこの世界が真っ暗で真っ黒にしか見えないし、ほかに見えるとしたら、それは絶望だよ。
希望じゃない、これは絶望。
みんなにはこの絶望……見える? それとも見えない?
よかったら、わたしに教えてよ。わたし、それが知りたいの。……で、どうなの、遙香。わたしを苛立たせるようなことを言ったら、すぐさま絶交だからね」
色々と負の感情をぶちまけたかと思えば、夏奈さんは遙香さんを質問の回答者として選び、彼女に怒りの矛先を向けた。
いや、それは違うのかもしれない。
もしかすれば、夏奈さんは遙香さんの言葉で救われたいのかもしれない。
この流れで、遙香さんが夏奈さんに酷い言葉を言うとは、やはり思えなかった。
案の定、遙香さんは満点の回答をした。
が、ぼくの予想とは違い、最後は厳しい言葉でもあった。
「結論から言うけど、夏奈が見てしまった絶望、それはわたしにも見えるよ。
ただし、あなたの目から見える絶望は、わたしの目から見える絶望ではないけどね。
いや、これはふざけているんじゃなくてね……要するに、希望や絶望は人それぞれだと思うのよ。
人それぞれ、希望や絶望の見え方や感じ方が違うのだと思うの。
じゃあ聞くけど、わたしの絶望があなたには見える? 具体的にはどういうもの? どれほど大きい? どんな色をしているわけ? どれほど、それはわたしを苦しめ、傷つけるの? ……意地悪な質問だっていうのは分かっているけど、つまりはそういうことだよ、夏奈。
結局のところ、人の感情は世界にひとつだけのもの。同じものなんて、存在しない。
みんな世界にひとつだけの感情を持っていて、それぞれ見え方や感じ方が違うの。
でね、大事なことを言うけど……希望が見えない、そうあなたは言ったわね。
それはあなたが“希望を見ようとしていない”からよ。
いくら、あなたの中に希望があっても、あなたが希望の存在をあると認めなくては、それは存在していられない。
いえ、それはきれいに言い過ぎね。
あなたは希望から目をそらしている。だから、あなたには希望が見えない。というか、あなたは希望を見ようとしていない。
あなた、もっとシャンとしなさい。いいわね、夏奈」
夏奈さんを見ると、彼女は目に涙を浮かべていた。
それは感動の涙か、悔し涙か、はたまた悲しみや怒りの涙か。
しかし、それはすぐに分かった。
夏奈さんは鼻をすすると、それから顔をしかめたかと思えば、唐突に吹き出した。
「遙香ってば、昔から変わらなさすぎ。
その持論、小学生のときに聞いたんだけど。
あんたさ、わたしをうれしくさせて、どうする気だっての。
まったく、これだから遙香は苦手なんだってば」
夏奈さんは詩織さんからティッシュペーパーを受け取ると、それで鼻をかんだ。
まさかの嬉し涙だったようだ。
夏奈さんが鼻をかんだあと、ぼくらは話し合いを再開させた。
「で、海堂さんにはどう返信するのよ、翔。
これはあなた宛に届いたメールなんだから、あなたが考えなさい」
そう環奈はぼくに厳しく言ったが、その言葉には力強い優しさが込められていた。
「時間と場所も、ぼくが決めていいんだね?」
ぼくが環奈に質問すると、彼女は時間が止まったかのようにピタリと停止した。
それから十秒ほどが経過。
環奈は困ったような表情で、徹を見遣った。
おそらくだが、環奈は場所と時間の件を失念していたのだろう。
徹はため息をつくと、おもむろにスマートフォンを取り出し、携帯電話の画面を見ながら「時間は午前九時、場所はカフェレストラン『カレス』」と最低限の情報のみ、ぼくらに伝えた。
ぼくは大きくうなずくと、スマートフォンを握りしめ、早速メールの返信を書き始める。
ぼくがメールを書いているあいだ、遙香さんたちは話し合いを続けていた。
ぼくは遙香さんたちの話し合いに口を挟まず、話し合いの内容を聞くこともなく、集中してメールの返信を書き終えた。
が、いち早くそれを読んだ勇人は「あのう、海堂さんの『堂』が『道』になっていますよ」と誤字を指摘してくれた。
なぜだろうか、勇人からの指摘で誤字を直すのがシャクに障ったぼくは「これでいいんだよ」とムキになってしまった。
すると、見事に詩織さんから「よくありません。今すぐに誤字を直すのです」と正論を言われ、ぼくは泣く泣く誤字を直した。
そのときに聞いた茜の「翔くんったら、酷いね」という言葉を、ぼくは死んでも忘れない。
ぼくが海堂さんに返信してから数分後、海堂さんから「了解。今、きみたちは『カレス』にいるんだよね? だったら、今すぐに向かうよ。待っていてくれ」という返信が来た。
ぼくらはというと、海堂さんがこの「カレス」に現れるまで、ゆっくりと休憩することにした。
ぼくらは大船に乗ったつもりで、救世主の登場を待った。
それから数十分後。
ぼくらの救世主であり、司令塔の海堂さんが「カレス」に現れた。
ちなみに言うと、ぼくの姉、大浦天音を連れた状態で、海堂さんはぼくらの前に現れた。
