バレンタイン当日。
奈央樹くんはNAKIとして仕事に行っているなか、マネージャーである三咲さんが私の家を訪れた。
「凛さん、お疲れ様です。NAKIにチョコレートが届いてるので置いていきますね」
「お疲れ様です。ありがとうございます、三咲さん」
そう言って、車から大きな箱を降ろす三咲さん。
その箱は、1箱、2箱と増えていき、最終的には10箱ぐらい積み上がっていた。
「これで全部です」
「お、多くないですか・・・?」
重ねられた箱はかなりの大きさだ。
この中にチョコがいつく入っているのだろうか。
「これでもNAKIの言う条件のもの以外は省いたんですけどね」
「?条件?」
奈央樹くんが出した条件って、なんだろう?
やっぱり、食べ切れる量のものだけ、とかかな?
だとしてもこの量は多すぎるけど。
「・・・いえ、なんでもありません。では、届けましたので。失礼しますね」
「あ、はい。ありがとうございました」
三咲さんが会釈をしながら帰っていき、それを見送ってから積み上げられた箱を見る。
この量貰って、どうするんだろう・・・。
そんな事を考えていると、玄関がガラッと開く。
「ただいま。チョコ届いた?」
玄関を開けたのは奈央樹くんだった。
このタイミングだと三咲さんとすれ違ってるかもしれないな。
「おかえり。届いたよ。大量にね。三咲さんから大量に箱を貰った時はどうしようかと思ったよ」
「・・・条件絞ったはずなんだけどな・・・こんなに多いとは・・・」
奈央樹くんに玄関先に積み上げられた箱を指差すと、予想以上に多い箱の数に頭を抱える。
本人もこんなに多いとは思ってなかったみたい。
「これ全部食べるの?致死量すぎない?」
「いや、食べないよ。欲しいのだけ貰ってあとは事務所に持ってってもらう」
そう言いながらテープをはがして箱を開けて中身を見る。
食べれるのって言ってたけど、嫌いなものとかあるのかな?
そんなことを考えて箱の中を見ると、ぎっしり入っていてギョッとする。
1箱にこの量入ってることはこれの10倍あるってことでしょ!?
「モテるのも大変だね〜・・・良かった、私出さなくて」
「・・・出してないの?」
私の言葉で、箱の中から1つラッピングされた箱を手に取りながら私の方を向く奈央樹くん。
その姿は意外だと言わんばかりだった。
「うん。チョコ作ったのはいいけど絶対こうなるだろうと思って出さなかったの」
「・・・なぁんだ、出てないのか・・・」
手にしたチョコを箱の中に戻しながら、ボソッと呟く奈央樹くん。
その言葉は聞こえなかったけど、少ししょんぼりしてる気がする。
「?どうしたの?」
「出してないだけで、あるよね?チョコ」
「え?い、一応あるけど・・・」
聞き返すと、奈央樹くんはチョコがあるかどうかを聞いてくる。
冷蔵庫の中に入れて冷やしてたからあるにはある。
けど、それがどうしたんだろう?
「欲しい。ちょうだい」
「へ・・・?あ・・・冷蔵庫の中に入ってるから──」
「直接渡して?」
まさか欲しいと言われるとは思ってなくて、挙動不審になりながら冷蔵庫の中にあると言おうとする。
だけど、奈央樹くんは手を差し出しながら言葉を遮った。
「ハイ・・・」
その勢いに負け、私はキッチンに向かった。



