眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛

 別な貴族からも声が上がる。あいつらが今回レイナー騎士団長に依頼した貴族か、とヴェルデは冷ややかな視線を送りながら、憤る気持ちをこらえるように降ろしたままの拳を握りしめた。

「ローラ嬢がスパイでないことは俺が直々に確認している。だが、それでもローラ嬢がこの国にいることが不満なのであれば……ローラ嬢。何か言いたいことはあるか?」

 ガレスにそう促され、ローラは会場を見渡して一瞬怯んだ。ローラを疑心暗鬼な目で見る人、不安げな表情の人、ヒソヒソと話をしている人。さまざまな人がローラに視線を集中させている。

(怖い……でも、私はここでヴェルデ様と一緒に生きていくとあの時決めたのだから。こんなことで怯んでいる場合ではないわ。私は百年前から何度も、色んなことを乗り越えてきたのだから)

 ぎゅっとドレスを掴み、ローラは目を瞑って深呼吸する。そして目を開いて横にいるヴェルデを見つめる。ヴェルデはローラの瞳をしっかりと見つめ、頷いた。それを見てローラも頷き、正面を見て口を開いた。

「私は確かに、百年前隣国であるティアール国で魔法によって眠り続け、百年後のこの時代にヴェルデ様に起こしていただいた身です」

 ローラの発言に、会場内が一斉にざわつく。

「目覚めた時、私は百年も眠り続けていたことを知って絶望しました。私の大切な家族、友人、知っている景色、何もかもがもう無い。私はただ一人ぼっちでこの時代に取り残されたのだと、そう思い、生きている意味などないと思いました。そして、一人どこかでひっそり死んでしまおう、そう思ったのです」