「あまり柚弦から家族の話聞いた事なかったでしょ」
「はい……」
「俺が虐待に気付いたのは高校に上がった時、あいつと俺と海斗の三人で旅行に行った時にあいつの体があざだらけになってるのを見て」
高校に上がった時、つまり二年はあの人から耐えていたんだ。
秋君の過去を聞いたのは初めてだったし、酷すぎる事に言葉が出なかった。
「それで早くあの家から出さないとと思って俺の家に住ませてたんだけど、あの毒親に見つかっちまってその時丁度時雨さんがお悩み相談のアドバイザーだと知り、同時に一人暮らしだという事を知ったんだ。だから無理やりあいつを時雨さんの家に住まわせた」
なぜ私の家?と正直思ったし初めは迷惑な話だと思った。だけど、秋君の事情を知ってそんな事はもうどうでもよくなった。
「そんな事があったんですね……」
私が深刻そうな面持ちで言うと会長はクスッと笑った。
「そんな顔しなくてもいいよ、柚弦はもう吹っ切ってるはずだし。それに同情されるのは嫌だって言ってたし。トラウマが残ってるとしたら多分音かな?全ての元凶であるあの事故の音」
「確かに、それは聞いた事があります」
「そうなんだ、珍しい柚弦が自分の弱さを見せるなんて」
秋君が人に弱さを見せるのはよっぽど珍しい事なのか会長は感心したように驚いていた。
みんな弱いところは見せたくないもんね。
ってか、秋君の音が苦手というのは半分私が言わせたというか。



