「じゃあお着物を貸してくださいますか」
「あっはいっお願いしますっ」
先輩のお母さんは礼儀正しい人。
美という言葉はこの人にあるんじゃ無いかというくらいこの言葉が似合う。
「みなさん、恋をしているのかしら」
「えっ?」
着付けをしてもらいながら囁くように放った言葉に異様に反応してしまう。
やっぱりわかるんだ。
「みたいですよ。みんな楽しそうにしてます」
「みたいってあなたは違うの?」
「私は、好きな人はいません。けど最近はある人の事をずっと考えてしまうんです」
嬉しかったり悲しかったりそういうのを全部あの人と共有したいと思ってしまう。
「それはきっと恋ですよ」
先輩のお母さんはベテランだ。人生の先輩であり恋の先輩でもある。
「でも、もし私が好きという事を伝えてしまったら今の関係が壊れてしまいんじゃ無いかって怖くなってしまう」
この関係が崩れる事が一番怖い。
だけどまだはっきりしていないこの気持ちを確かめる方法もない。
だから今は現状維持をするしかない。
「気持ちを伝えるのも大切ですが今の関係を保つのもまたいい事です。恋に正解なんてありません。自分達が思う恋が恋愛というものです。」
「だから自分達のベースでいいんですよ。周りに合わせなくても大丈夫です」
すごいなぁそうやって客観的に物事を考えて自分の意見を言葉にできるなんて。
「ありがとうございますっなんだか私焦っていたのかも……」
「周りが恋をしだすと焦る気持ちもわかります。だけどまずは好きという気持ちを確実なものにする事から始めるといいかもしれません」
「はいっ……」
やっぱり大人の人はごい。私はお悩み相談をする時、相手の気持ちを考えて寄り添う考え方をするけど、この人は自分の人生から解決策を見つける考え方をしている。
人生経験が豊富な人だからこその考え方。
私はまだまだだ、本でも得られるものもあるけど自分が体験したものは現実味を帯びていて信ぴょう性がある。
私も頑張ろう。そう思わせてくれた。



