面会票に家族みんなの名前を書いて、エレベーターホールで「上」のボタンを押す。
到着を知らせるチャイムが鳴って、一階に降りてきたエレベーターのドアが開く。
ひとり、降りてくる子がいた。
乗っていたのは、僕よりうんと背の高いお姉さん。
明るい茶髪をポニーテールに結って、グレーのセーラー服を着ている。
首からさげたカメラがおしゃれだ。
僕がちょうどいちばん前に立っていたから、その子と向かい合う形になった。
「……」
時間にして二秒くらい。
でも、何故だろう、時間が止まって感じた。
「ふふ」
何も言わずにほほ笑むと、右に九十度向きを変えて、つかつかと去っていった。
──綺麗なひとだったなあ。
「何してんの」
後ろのお母さんに背中をつっつかれた。
「ぼーっとしちゃって。早く乗りなさい」
いけない、お母さんににやにやした顔をみられたかなあ。
あ、僕がいちばん前だから見えないや。よかった。
ちょっとだけほっとして、僕たち家族はエレベーターに乗り込んだ。
◇
息を助けるたくさんの装置につながれて、そのひとは眠る。
「■■ちゃん」
声をかけてみる。
聞こえているように見える。
あと二回呼んで、体を何回かゆすれば、目を覚ましそうだ。
それくらい自然に、眠っているようにしか見えないんだ。
優しかった■■ちゃん。
どんなに僕がけんかしても、味方でいてくれた、■■ちゃん。
朝が弱かった■■ちゃん……。
そう、そうだよ。
■■ちゃんは朝が弱かった。
だから今も寝起きが悪いだけなんだ。
だから、ね。
僕は体をゆする。
──ねえ、起きて。
「あお」
──ねえってば、■■ちゃん……。
「あお、よしなさい」
お父さんに制されて、僕は涙をこぼしながら、その手を離した。
「大変お待たせいたしました」
お医者さんが、病室に入ってきた。
◇
到着を知らせるチャイムが鳴って、一階に降りてきたエレベーターのドアが開く。
ひとり、降りてくる子がいた。
乗っていたのは、僕よりうんと背の高いお姉さん。
明るい茶髪をポニーテールに結って、グレーのセーラー服を着ている。
首からさげたカメラがおしゃれだ。
僕がちょうどいちばん前に立っていたから、その子と向かい合う形になった。
「……」
時間にして二秒くらい。
でも、何故だろう、時間が止まって感じた。
「ふふ」
何も言わずにほほ笑むと、右に九十度向きを変えて、つかつかと去っていった。
──綺麗なひとだったなあ。
「何してんの」
後ろのお母さんに背中をつっつかれた。
「ぼーっとしちゃって。早く乗りなさい」
いけない、お母さんににやにやした顔をみられたかなあ。
あ、僕がいちばん前だから見えないや。よかった。
ちょっとだけほっとして、僕たち家族はエレベーターに乗り込んだ。
◇
息を助けるたくさんの装置につながれて、そのひとは眠る。
「■■ちゃん」
声をかけてみる。
聞こえているように見える。
あと二回呼んで、体を何回かゆすれば、目を覚ましそうだ。
それくらい自然に、眠っているようにしか見えないんだ。
優しかった■■ちゃん。
どんなに僕がけんかしても、味方でいてくれた、■■ちゃん。
朝が弱かった■■ちゃん……。
そう、そうだよ。
■■ちゃんは朝が弱かった。
だから今も寝起きが悪いだけなんだ。
だから、ね。
僕は体をゆする。
──ねえ、起きて。
「あお」
──ねえってば、■■ちゃん……。
「あお、よしなさい」
お父さんに制されて、僕は涙をこぼしながら、その手を離した。
「大変お待たせいたしました」
お医者さんが、病室に入ってきた。
◇

