【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「んだよ、自分だけ釣れてるからって! 調子づいて!」

 僕はたいようのお父さんの大切な釣り竿を足元の防波堤(ぼうはてい)に叩き付けた。
 それはコンクリートの堤に打ち付けられて、乾いた音をあげた。
 たいようも、自分のお父さんの竿に乱暴した僕にとても腹を立てたようだ。

「何してんだよ!」
「帰るのー! 一匹も釣れないし、もうやめにする!」

 そういうと、ライフジャケットを脱ぎ捨てた。

「あー、いけねーんだー、それ脱いじゃー。父ちゃんに言ってやろー」
「怖いの? おまえこそビビリじゃん!」
「あんだとこのやろー!」

 売り言葉に買い言葉。
 たいようもまた、ライフジャケットを脱いだ。

「こらー、二人とも。けんかしちゃあ、だめよー!」

 その様子を遠くで見ていたあさぎお姉ちゃんが、叫んだ。
 間の悪いことに、たいようのお父さんの竿がこの時アタリを引いていた。
 だから、タモアミを手渡していたところで、僕たちからは離れていた。

◇

 この日は、風が強かった。
 けれどたいようのお父さんはベテランで、この程度なら問題ないと判断していた。
 彼が立っていたのは、防波堤の中でも波消しブロックの近くだったからだ。

 しかし、少し離れた位置にいた僕とたいようは違った。
 もみくちゃになり、取っ組み合いのけんかを始めていた。

「まてよ!」

 逃げ出したたいようを追いかけ、僕も走りだした。
 二人が向かったのは、防波堤の先端。
 びしょぬれで、高い波が打ち付ける極めて危険な場所だった。

「おじさん、あお君とたいよう君が!」

 異変に気が付いたあさぎお姉ちゃんがたいようのお父さんを呼ぶ。
 海がうねる。
 十秒後には防波堤より高い波が叩きつけるだろう。

 その時。

◇