【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「んだよ、自分だけ釣れてるからって! 調子づいて!」

 僕はたいようのお父さんの大切な釣り竿を足元の防波堤(ぼうはてい)に叩き付けた。
 それはコンクリートの堤に打ち付けられて、乾いた音をあげた。
 たいようも、自分のお父さんの竿に乱暴した僕にとても腹を立てたようだ。

「何してんだよ!」
「帰るのー! 一匹も釣れないし、もうやめにする!」

 そういうと、ライフジャケットを脱ぎ捨てた。

「あー、いけねーんだー、それ脱いじゃー。父ちゃんに言ってやろー」
「怖いの? おまえこそビビリじゃん!」
「あんだとこのやろー!」

 売り言葉に買い言葉。
 たいようもまた、ライフジャケットを脱いだ。

「こらー、二人とも。けんかしちゃあ、だめよー!」

 その様子を遠くで見ていたあさぎお姉ちゃんが、叫んだ。
 間の悪いことに、たいようのお父さんの竿がこの時アタリを引いていた。
 だから、タモアミを手渡していたところで、僕たちからは離れていた。



 この日は、風が強かった。
 けれどたいようのお父さんはベテランで、この程度なら問題ないと判断していた。
 彼が立っていたのは、防波堤の中でも波消しブロックの近くだったからだ。

 しかし、少し離れた位置にいた僕とたいようは違った。
 もみくちゃになり、取っ組み合いのけんかを始めていた。

「まてよ!」

 逃げ出したたいようを追いかけ、僕も走りだした。
 二人が向かったのは、防波堤の先端。
 びしょぬれで、高い波が打ち付ける極めて危険な場所だった。

「おじさん、あお君とたいよう君が!」

 異変に気が付いたあさぎお姉ちゃんがたいようのお父さんを呼ぶ。
 海がうねる。
 十秒後には防波堤より高い波が叩きつけるだろう。

 その時。