【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「! 何か聞こえる!」
『よし、いいね、記憶にアクセスできたんだ』

 最初に見えたのは、教室。
 数学に英語。

 小学校のじゃない。
 中学校みたいだ。

 目の前にはきぃ子ちゃんが座っている。
 机に置かれたのは、まるばつゲームのマス目。

 ──まるばつゲームをしましょ。
 ──もう、終わりにしましょ、安西さん。
 ──私の命を、贄にするの。それで、おしまい。

『いいぞ、そのままゆっくり、過去にさかのぼるんだ』

 ぼっ、と、お化けたちの、僕の友人たちの写真が燃え始めた。

『ボク、がんばれ!』
『つきもりくんならできるよー』
『しんじてるから』
『鈴も、いつまでも応援しています』

 僕はその言葉を、声を、魂に刻んだ。
 ありがとう。
 君たちのことは、忘れない。

 ……あっという間にインスタント写真たちは、灰となって消えた。

 お姉ちゃん。あさぎお姉ちゃん。僕は何度も、何度も呼びかけた。

 また教室だ。
 でもそれは、見慣れた、「僕らが通っている五年生の教室」だった。

 ──うん、いい。あと二年だけでも、声が聞けるなら。
 ──出さなきゃ負けよー じゃんけん……ぽん!

 記憶がどんどん古くなっていく。

 ──安西さん、安西さん。どうしよう。あお君が、あお君が死んじゃったら、私……
 ──宝探し?  はんこんじゅつ?

 そして。



 ──ざー、ざぱーん。ざー、ざぱーん。

 それは、遠い海鳴りの音。
 防波堤(ぼうはてい)にぶつかってはくだける、白波の奏でる歌声。

 海の音、波の音が聞こえる。
 確かに、はっきりと。

「見つけた!」

 僕は思わず叫んだ。

 最後の宝探しは。
 ──僕の勝ちだった。