二年と五日目。きぃ子ちゃんとの出会いの日。令和六年五月二十四日。金曜日。

 昨日まで二日かけて降った雨は、昼過ぎに止んだ。

 五月の空は碧落一洗(へきらくいっせん)、まるで洗い流したかのように()み渡っていた。
 五日前、■■ちゃんが入院した日も、こんな風に晴れていた。

 不幸があった時、その悲しみが深ければ深いほど、空は晴れるものだ。
 僕は空の神様からそう学んだよ。

 そんな空の神様に聞いてみる。
 僕の大切な■■ちゃんは、今そっちにいますか。
 それとも、まだこっちにいるのですか。

 下町中央にある、総合病院に向かうお父さんの車の中から窓の外を見て、ひとりため息を()く。
 空の神様は、肝心のことは、教えてくれはしなかった。

 下町中央総合病院。北九州の過疎化(かそか)した町にあって、不釣り合い(ふつりあい)なほど大きな総合病院。

 五年位前に改装工事(かいそうこうじ)が済んだばかりで、真白(ましろ)でクリーンなタイル張りの清潔感あふれるその病院は、命の危機にあるすべての人を守るための、砦。
 最新鋭の医療機器(いりょうきき)を武器にして、迫りくる死神たちを撃退する。

 今は、僕の■■ちゃんを守ってくれている。

 でも、それももう駄目なのかもしれない。
 今日、主治医(しゅじい)の先生に電話で呼び出されたからね。

「ご家族にお伝えしなければならないことがございます。皆さんでお越しください」