【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 きぃ子ちゃんは、はじめ戸惑っているようだった。
 でも、僕は粘った。

「教えて。全部。効果とやり方を」
『……わかった』

 彼女はひとつづつ、時間をかけて丁寧に教えてくれた。
 僕はその説明を、黙って聞いていた。
 そして。

「待って」

 二十四個目に教えてくれた術が、とても気になった。

「その、『(きつね)の窓』について、詳しく教えてくれない?」
『狐の窓とは、妖怪や異界のことを垣間(かいま)見るための術のことだよ。手をこんな風に組んでね』

 きぃ子ちゃんは写真の中で、見たことのない風に指を組んでみせた。

『この隙間から見ると、この世の理から外れたものを見ることができる、そういう術だよ。……それがどうかしたかい?』

 この世の理から外れたもの──そうだ!

「例えば、誰かの心の中を(のぞ)くことは、できる?」
『うーん。そういう使い方をしたことがないからね、何とも言えない』
「でも。試してみる価値は。あるよね」
『あお君。きみはいったい何を考えて……』

 僕はにっこり笑って答えた。

「宝探しだよ。きぃ子ちゃん。お姉ちゃんともやったんでしょ? 僕ともやろう。それが最後の遊び。ね? 一緒にやろう」



 僕はリュックにみんなを詰めて、自分の部屋を飛び出した。
 玄関を出て、自分の自転車にまたがった。そしてゆるい坂道をこぎ出した。

『どこに行くんだい』

 きぃ子ちゃんがリュックの中から尋ねてくる。

「下町の総合病院! お姉ちゃんのところ!」
『あさぎの? なんでまた』

 きぃ子ちゃんは驚いてるんだろうけれど、僕はかまわない。

「いいからいいから! 宝探し、楽しみだよ!」

 体に無限の勇気が()くのを感じる。
 近い言葉で表すなら、そう。

 ──生きている、だった。

「あはははは、たーのしー!」

 僕がひときわ大きな声で笑う。息をはあはあ振りまいて。

 この上り坂の向こうに、総合病院がある。
 僕の大好きだったお姉ちゃんが眠る、病院が。
 きぃ子ちゃんの地獄を終わらせる、希望が。

 希望があるんだ!