【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 気が付いたらわたしはあお君の後ろにいた。
 目の前には、泣いてるきみの背中。

 この子が泣いているということは、わたしはまた、「失敗」したんだと理解した。

 そう、あお君。
 わたしはね。
 なにもかもに失敗したんだよ。



 あさぎは死んでいなかった。
 あの時のふたりの弟と同じ。植物状態になっていた。
 わたしは賭けに勝ったんだ。

 あの日の四時半を過ぎても。きみは死んでいなかった。
 あさぎも賭けに勝ったんだ。

 けれども、地獄は終わらなかった。

 あさぎが、心の支えだった親友がいない。
 きみも、お姉さんを失ったも同然。
 わたしの魂はもっと深い地獄へ落ちたのだと知るまで、そう長くはかからなかった。

 あさぎがいない、いびつな空白は、月森家もゆがめた。
 きみをはじめ家族のみんなはあさぎを忘れた。
 あさぎと関りがあるわたしのことも、きみは忘れていた。

 ──結局、わたしが仕掛けた術は、誰ひとりとして幸せにはしなかった。



 自分の家族も。
 きみの家族も。
 きみのお姉さんも。

 自分の命さえ。

 何ひとつ誰ひとり救うことができなかった。

 ならばどうする?
 わたしに出来ることは、残っている?

 そう。ひとつだけ、残っていた。

「泣かないで、きみ。ね? ほら、これ。あげるから」
「わたしの顔に、何かついてるかい? ……初めて会うわけじゃ、ないだろうに」

「わたしはインスタントカメラのきり子。よろしくね?」

 幸いにして最後にひとつだけ。
 残っていたんだよ。