気が付いたらわたしはあお君の後ろにいた。
目の前には、泣いてるきみの背中。
この子が泣いているということは、わたしはまた、「失敗」したんだと理解した。
そう、あお君。
わたしはね。
なにもかもに失敗したんだよ。
◇
あさぎは死んでいなかった。
あの時のふたりの弟と同じ。植物状態になっていた。
わたしは賭けに勝ったんだ。
あの日の四時半を過ぎても。きみは死んでいなかった。
あさぎも賭けに勝ったんだ。
けれども、地獄は終わらなかった。
あさぎが、心の支えだった親友がいない。
きみも、お姉さんを失ったも同然。
わたしの魂はもっと深い地獄へ落ちたのだと知るまで、そう長くはかからなかった。
あさぎがいない、いびつな空白は、月森家もゆがめた。
きみをはじめ家族のみんなはあさぎを忘れた。
あさぎと関りがあるわたしのことも、きみは忘れていた。
──結局、わたしが仕掛けた術は、誰ひとりとして幸せにはしなかった。
◇
自分の家族も。
きみの家族も。
きみのお姉さんも。
自分の命さえ。
何ひとつ誰ひとり救うことができなかった。
ならばどうする?
わたしに出来ることは、残っている?
そう。ひとつだけ、残っていた。
「泣かないで、きみ。ね? ほら、これ。あげるから」
「わたしの顔に、何かついてるかい? ……初めて会うわけじゃ、ないだろうに」
「わたしはインスタントカメラのきり子。よろしくね?」
幸いにして最後にひとつだけ。
残っていたんだよ。
目の前には、泣いてるきみの背中。
この子が泣いているということは、わたしはまた、「失敗」したんだと理解した。
そう、あお君。
わたしはね。
なにもかもに失敗したんだよ。
◇
あさぎは死んでいなかった。
あの時のふたりの弟と同じ。植物状態になっていた。
わたしは賭けに勝ったんだ。
あの日の四時半を過ぎても。きみは死んでいなかった。
あさぎも賭けに勝ったんだ。
けれども、地獄は終わらなかった。
あさぎが、心の支えだった親友がいない。
きみも、お姉さんを失ったも同然。
わたしの魂はもっと深い地獄へ落ちたのだと知るまで、そう長くはかからなかった。
あさぎがいない、いびつな空白は、月森家もゆがめた。
きみをはじめ家族のみんなはあさぎを忘れた。
あさぎと関りがあるわたしのことも、きみは忘れていた。
──結局、わたしが仕掛けた術は、誰ひとりとして幸せにはしなかった。
◇
自分の家族も。
きみの家族も。
きみのお姉さんも。
自分の命さえ。
何ひとつ誰ひとり救うことができなかった。
ならばどうする?
わたしに出来ることは、残っている?
そう。ひとつだけ、残っていた。
「泣かないで、きみ。ね? ほら、これ。あげるから」
「わたしの顔に、何かついてるかい? ……初めて会うわけじゃ、ないだろうに」
「わたしはインスタントカメラのきり子。よろしくね?」
幸いにして最後にひとつだけ。
残っていたんだよ。

