【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 結論から言うと。

 あさぎは、あの日の術のことを忘れてなどいなかった。
 それがわたしにとっての最大の誤算(ごさん)だった。



 今からちょうど九十日前のことだよ。令和六年。三回目の、五月十七日。

 たいようがいない二年間は地獄だった。
 胸に空いた穴に温度のない冷たい風が透き通って、つらくてつらくてたまらなかった。
 それよりなにより。

 ──あさぎとあお君。幸せそうなきみたちを見ているのが本当に苦痛でね。

 自分で命を選んでおいて、申し訳ない。
 本当に勝手だとは思うけれど。
 でも。

 わたしはもう、この地獄から逃れることしか考えられなくなっていた。
 わたしはもう、終わりにしたかったんだ。



 事故が起きたのが午後四時半。
 その時間になる前に、術を結びなおすしかない。
 時間がなかった。

 また嘘の陣取りゲームをして、あさぎを欺いて、わたしの魂を贄にして、あさぎをせめて一刻も早く笑顔にして。
 そしてわたしの魂はあお君として生き続ける。

 計画は順調。
 あとは和紙に点を書くだけ。
 一度始めてしまえさえすれば、止まることはない。

 わたしはじゃんけんであさぎが出す手が読める。
 だから今回も、「あさぎに勝つことはできずに」勝負は終わる。
 そのはずだった。

「まるばつゲームをしましょ」

 その時、あさぎが唐突に勝負の変更を願い出た。