くるり。きぃ子ちゃんは笑顔のままこちらを向いた。そして、その写真を優しく僕に差し出した。

「はい。おともだち。一人追加ね」

 そして、制服の砂を払いながら、後ろを向いた。

「ほら、これでもう寂しくないでしょ。だから、ね。泣かないで」
「……泣いてなんかいないよ、僕……」

 でも、いつも僕のこの指摘には答えてくれない。
 あの頃から変わらないなあ。
 きぃ子ちゃんに初めて出会ったのは、たしか■■から五日目の事だった。

 ん?
 なにから、五日目だったっけ。
 えーっと、えーっと。

 あ、きぃ子ちゃんが僕を置いて行ってしまう。

「待ってよー」
「ほら、おいてくよ」

 逢魔が時の秘密の遊び。
 たくさん増えてゆく僕だけのお化けのお友達。
 不思議なお姉さん。

 これは僕と、不思議なお姉さんと、お化けたちとの、不思議なひと夏の記憶。



 ひとつ目のお話、どうだったかな。

 え? 口裂け女さんが可哀そう?
 はは。そうかもね。
 きぃ子ちゃんは「勝負」に関しては容赦がないから。

 それより、ね。
 今聞かせたお話には、一部不完全なところがあったと思う。
 とても大切な記憶を、僕はなくしているんだ。

 でも、今だから言えることなんだけれど。
 生きているうちにね、どうしても忘れてしまうことだって、あるんだよ。

 人は傷ついて、忘れながら生きていく生き物だから。

 さあ、次のお話に移ろう。
 今度のお友達が、待っているよ。