【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 そして、二年と九十三日前のこと。令和四年五月十七日。火曜日。

 学校帰りにお父さんの引率で、子供ふたりと、わたしがお願いしたあさぎをつれて近所の漁港に釣りに行くことになったんだ。

 わたしも、直前まで一緒に行く予定だったんだけど、隣のF市に住んでる母方のおばあちゃんが、膝を痛めてしまってね。
 庭の掃除を手伝うことになった。
 仕方なく、自転車で一時間かけてひとりおばあちゃん家に行っていた。

 だから、あの港の防波堤(ぼうはてい)で「それ」が起きた時。
 何が起きたのか知っているのはお父さんとあさぎだけだった。

 釣りに慣れたお父さんなら、海の怖さを知っているはず。
 絶対にライフジャケットも持って行ったはずだったんだ。

 でも、実際にきみたちが救助されたとき、ライフジャケットはふたりとも身に着けていなかった。
 お父さんは助けようとして怪我をしてしまったし、あさぎも気が動転していてね。

 最後まで誰も、ライフジャケットのことを警察に説明することはできなかったんだ。

 ともかく、きみとたいようは波にさらわれて、堤防の外側に落ちた。
 水深は六メートルはあったそうだよ。

 お父さんも飛び込んだけど、強い波に防波堤にたたきつけられて意識を失った。
 百十番に連絡したのはあさぎだった。
 お父さんが目を覚ました時、ちょうどたいようが救助されたところだった。

 事故の発生から一時間が経過していた。