【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「隣の部屋?」

 お鈴ちゃんは何を言っているんだろう。
 僕の隣の部屋は、生まれた時から倉庫代わりの物置で……。

『実際に見てみるといいよ』

 きぃ子ちゃんが優しい、とてもやさしい声で促す。
 僕はきぃ子ちゃんの写真を手に取ると、今日初めて布団から立ち上がって、ふすままで歩いた。
 そしてそれを、ゆっくりと開けた。

 思ったよりそれは軽くて、思ったよりそれは簡単だった。



 隣の物置までは四歩でつく。重たい色をした木の引き戸は、見たまま重たくて、固くて。

「んー!」

 どんなに力いっぱい引いても、びくともしない。

「だめだ、開かないよ。この扉はずっと前から建付けが悪くて、大人でもなかなか開かなくて」
『本当に開かない? 本当に重たい扉かな?』
「? 何を言って──」

 僕がポケットに仕舞(しま)ったきぃ子ちゃんの写真からもう一度扉を見ると。

 あさぎの部屋。

「え?」

 さっきまで重たい木の扉だったそれは、僕の部屋と同じ柄のただのふすまで、可愛い文字が書かれたネームプレートまでかけてある。

「なんで? え? これって……」
「開けてごらん」

 きぃ子ちゃんは静かに言った。

 信じられない。
 ここは生まれてから今日まで十一年間ずっと物置だった。
 それが見知らぬ誰かの部屋で、しかもその誰かは自分のお姉ちゃんだという。

 そして今、目の前にはそのお姉ちゃんの部屋がある。
 僕は、恐る恐るふすまを開けた。