【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「──は?」

 あまりに突飛(とっぴ)なことを言うきぃ子ちゃんに、僕は言葉も出ない。

 なんでって?
 だって僕は一人っ子で、家族は僕の他はお父さんとお母さんしかいないのだから。

 そうに決まっているんだ。
 僕が生まれた時から。

『連想ゲームをしよう、あお君』

 僕は枕元のゴミ箱からきぃ子ちゃんと、他のみんなの写真を取り出した。

『九十日前が、事故からちょうど二年後だった。その五日後にきみはわたしと出会った。その時のことを覚えてる?』
「うん。確か……かくれんぼしたんだよね」
『せーかい! そーだねー、つきもりくん!』

 みんなの中でいちばん小さなトイレの花子さんが僕を見てとっておきの笑顔で笑う。

『その時、きみは泣いていたんだ。どうしてだか、覚えているかな?』

 そうだ、泣いていた。
 なんで泣いていたんだ?
 なんで……。

『どこにいたか、ボクは覚えてる?』

 みんなの中でいちばんお姉さんの口裂け女の瞳さんが、可愛い声で聞いてきた。

「なんで口裂け女さんが知ってる風に言うの?」
『ボクが寝てる隙にね。いろいろ聞いたんだから、あたしたちってば』

 そうなのか。
 知らないのは僕だけなんだ。
 けどやっぱり。

「……どこだろう。全然思いだせないや」
『れんそうゲームだよ、あおくん』

 みんなの中でいちばん頭の切れる座敷童くんが、助け舟を出してくれた。

『トイレのはなこさんは、どこにいたおばけだった?』
「そうだ……下町総合病院だ」
『そう、正解』

 大好きなきぃ子ちゃんが教えてくれた。そして続ける。

『どうして病院にいたか、わかるかい?』
「どうしてって……」

 相変わらず思い出すこともままならない僕は、またしても壁にぶち当たった。

『隣のお部屋に行けばわかるんじゃないかしら』

 一つ目小僧のお鈴ちゃんが、控えめな声で恥ずかしそうに言った。