【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 きぃ子ちゃんが気づいたとき、缶までの距離は二人とも互角だった。
 こうなると脚力で勝る口裂け女さんの方が優勢だ。

 勝負あった!
 誰もがそう思った、まさにその瞬間だった。

 二メートルの距離を「瞬間移動して」、きぃ子ちゃんが缶に足を乗せた。

「はい、口裂け女さん、みーっけ!」

 ずざー。口裂け女さんは力なくずっこけて、公園の砂利の地面に突っ伏した。

「……」
「ふふ、惜しかったねえ、口裂け女さん?」

 にんまり。
 きぃ子ちゃんはいやーな顔で笑う。

「……もー、なんなのよう、いまのー」

 赤いワンピースと、腰までのロングヘアに付いた砂を払いながら、口裂け女さんが不機嫌そうに立ち上がる。

 ……うん。僕もそう思う。
 まるで「お化けみたいに」移動したから。

 お化けじゃない僕から見たって、あんなの反則だ。

◇

 残るは僕ひとり。さっきのを見る限り、足の速さではどう頑張っても勝てそうにないのは明白だ。
 ならば。

 極力気配を消しながら茂みから茂みを伝って渡り歩く。
 布ずれの音と落ち葉をふむ音はするものの、どうやら、耳の良さは普通の女の子並みらしい。

 そおっと、茂みから円の中をのぞく。
 あ、お鈴ちゃんと目が合った。
 こくこく。黙って首を縦に振ってサインをくれる。

 ちょうどきぃ子ちゃんは後ろを向いている。
 でも、見つかるわけにはいけない。
 あの瞬間移動には絶対に勝てる自信はない。

 そろり、そろり。
 茂みの端まで来た。

 問題はここからだ。
 缶までは十五メートル。
 僕より足が速いのに捕まった、口裂け女さんより条件が悪い。

 はあ……ここまでか。
 これはもう、降参するしかないか……そう思ったその時。

「ん?」