【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 きぃ子ちゃんが気づいたとき、缶までの距離は二人とも互角だった。
 こうなると脚力で勝る口裂け女さんの方が優勢だ。

 勝負あった!
 誰もがそう思った、まさにその瞬間だった。

 二メートルの距離を「瞬間移動して」、きぃ子ちゃんが缶に足を乗せた。

「はい、口裂け女さん、みーっけ!」

 ずざー。口裂け女さんは力なくずっこけて、公園の砂利の地面に突っ伏した。

「……」
「ふふ、惜しかったねえ、口裂け女さん?」

 にんまり。
 きぃ子ちゃんはいやーな顔で笑う。

「……もー、なんなのよう、いまのー」

 赤いワンピースと、腰までのロングヘアに付いた砂を払いながら、口裂け女さんが不機嫌そうに立ち上がる。

 ……うん。僕もそう思う。
 まるで「お化けみたいに」移動したから。

 お化けじゃない僕から見たって、あんなの反則だ。



 残るは僕ひとり。さっきのを見る限り、足の速さではどう頑張っても勝てそうにないのは明白だ。
 ならば。

 極力気配を消しながら茂みから茂みを伝って渡り歩く。
 布ずれの音と落ち葉をふむ音はするものの、どうやら、耳の良さは普通の女の子並みらしい。

 そおっと、茂みから円の中をのぞく。
 あ、お鈴ちゃんと目が合った。
 こくこく。黙って首を縦に振ってサインをくれる。

 ちょうどきぃ子ちゃんは後ろを向いている。
 でも、見つかるわけにはいけない。
 あの瞬間移動には絶対に勝てる自信はない。

 そろり、そろり。
 茂みの端まで来た。

 問題はここからだ。
 缶までは十五メートル。
 僕より足が速いのに捕まった、口裂け女さんより条件が悪い。

 はあ……ここまでか。
 これはもう、降参するしかないか……そう思ったその時。

「ん?」