【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 オニはきぃ子ちゃんだ。

「一つ目小僧のお鈴ちゃん、みーっけ!」

 ぎくっ。
 きぃ子ちゃんのウグイスみたいな高く澄んだ声が、お鈴ちゃんの背中に刺さる。
 開始十秒でお鈴ちゃんが見つかった。

 つ、強い。
 オニなだけあって、鬼のように強い。

 今日のきぃ子ちゃんは本気だ。
 いつになくマジだ。

「あーん、見つかっちゃった」

 お鈴ちゃんが泣き言を言いながら立ち上がって、きぃ子ちゃんの周りに描かれた円の中に捕らわれていった。
 まずい、と僕は焦る。

 お鈴ちゃんが見つかったのは僕のとなりの山茶花(さざんか)の茂みだったからだ。

「座敷童くん、みーっけ!」

 今度は公園の、僕の隠れ家とは反対側にある、公衆トイレの陰に隠れていた座敷童くんが見つかった。
 お鈴がきぃ子ちゃんの円に入ってから三十秒も経っていない。

「さすがだね、きぃこちゃん」

 観念(かんねん)した座敷童くんが、歩き出す。
 駄目か……。
 僕の心はすでに敗色濃厚だ。

 でも、このまま負けたらインスタントカメラはもらえない。
 またいつも通りの日々が戻る。
 そういう風に考えると、少しだけほっとする。

「!」

 あ、口裂け女さん!

 円の外側で遠くを見るため目を細めるきぃ子ちゃんの死角(しかく)をうまいこと伝って、缶に近づいている。
 さすがの最年長だけあって、遊び心を心得ているなあ。

 ぬき足さし足、缶との距離をじりじりと縮めている。
 けってほしい気持ちと、勝ちたくない気持ちがせめぎあって、複雑な思いだ。

「あ!」