【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 安西さんはライターで沈香に火をつけた。
 するすると白い煙が立ち上る。

 次いで安西さんがポケットから出したカッターの刃をゆっくりと押し出す。

「っ!」

 そして右手の小指の先を切って、一滴、硯にたまった墨汁に垂らした。

「はい、あさぎも」

 そう言ってカッターを私に渡して来た。

「賭けたいものの大きさで指を選んで」

 そう。それならば私は。
 ちくり。

「ふうん、その指にするんだ」

 左手の薬指から滴り落ちた私の血は、墨汁に溶け込み消えた。
 安西さんはそれを筆でゆっくりかき混ぜる。

 そして和紙にひとつづつ、丁寧(ていねい)に点を打っていった。
 ひとつ、ふたつ。私はそれを頭の中で数えた。
 点は全部で四十二個。

「十四の倍数だよ。これで十四日待つ代わりとする」
「何をするの?」
「陣取りゲームだよ。この前のレクリエーションの時間でもやっただろ? じゃんけんで線を結んで、より多く陣地を作った人の勝ち」

 ああ。思い出した。
 あの日は同じように安西さんとやった。
 鉛筆と画用紙だったけど。

 結果は私の惨敗(ざんぱい)
 安西さんはじゃんけんがとても強い。
 まるで「相手が何を出すか知っているかのよう」だった。

「さあ、始めようか。……出さなきゃ負けよー」
「じゃんけん……」

 ぽん! 私がチョキで、安西さんがグー。

「はい、わたしからね」

 安西さんはそう言うと、紙の中央に、点と点を結んで一本線を引いた。

「あさぎの番だよ」

 私の大好きな安西さんがにっこりと笑う。
 これが、私たちの大切な二人の人間の「命」がかかった禁断の反魂術だなんて、これっぽっちも感じさせないように。