バス停前からスタートして。
僕の大好きなジャンボ餃子がおいしい中華料理屋さんの前を通り過ぎて。
郵便局を過ぎて、両脇が田んぼしかないストレートに入った。
「待てー、この悪ガキめえっ!」
口裂け女さんはとても足が速い。
そして僕は、けんかはする癖に、運動神経はクラスでもいい方ではない。
「ほら、きみ。急がないと追いつかれちゃうよ」
「そんなっ! ……こと言ったってっ!」
はあっ、はあっ。
息が上がる。胸が燃え上がるように痛い。
そして背後に感じるちりちりとした刺すように冷たい殺意がどんどん大きくなる。
「あはははは、たーのしー!」
きぃ子ちゃんがひときわ大きな声で笑う。
息を一ミリも乱していない。
どんだけ肺活量があるんだろう。
でも、僕はもうだめだ。
あと三秒後には、すぐ後ろに迫る口裂け女さんに捕まるだろう。
◇
僕は暗い水の底でもがいている。
■■くんと一緒に海に落ちたのだ。
おぼれて、波でもみくちゃにされて、水面に上がりたいのに、どんどん沈んでいく。
おぼれるって、なんだか鬼ごっこに似ている気がする。
水底というオニから、必死で逃げる鬼ごっこ。
そういば。
僕はこの鬼ごっこをクリアしたんだろうか。
水面目指して上がるだけなのに、途方もないことのように思えて、とてもクリアできたとは思えないんだ。
あ。頭上で誰かが手を伸ばしてる。
誰の手だろう。腕時計が見える。
十字架の模様が入った、キャメルのベルトが可愛い腕時計。
この手は、誰なんだろう──。
◇
僕の大好きなジャンボ餃子がおいしい中華料理屋さんの前を通り過ぎて。
郵便局を過ぎて、両脇が田んぼしかないストレートに入った。
「待てー、この悪ガキめえっ!」
口裂け女さんはとても足が速い。
そして僕は、けんかはする癖に、運動神経はクラスでもいい方ではない。
「ほら、きみ。急がないと追いつかれちゃうよ」
「そんなっ! ……こと言ったってっ!」
はあっ、はあっ。
息が上がる。胸が燃え上がるように痛い。
そして背後に感じるちりちりとした刺すように冷たい殺意がどんどん大きくなる。
「あはははは、たーのしー!」
きぃ子ちゃんがひときわ大きな声で笑う。
息を一ミリも乱していない。
どんだけ肺活量があるんだろう。
でも、僕はもうだめだ。
あと三秒後には、すぐ後ろに迫る口裂け女さんに捕まるだろう。
◇
僕は暗い水の底でもがいている。
■■くんと一緒に海に落ちたのだ。
おぼれて、波でもみくちゃにされて、水面に上がりたいのに、どんどん沈んでいく。
おぼれるって、なんだか鬼ごっこに似ている気がする。
水底というオニから、必死で逃げる鬼ごっこ。
そういば。
僕はこの鬼ごっこをクリアしたんだろうか。
水面目指して上がるだけなのに、途方もないことのように思えて、とてもクリアできたとは思えないんだ。
あ。頭上で誰かが手を伸ばしてる。
誰の手だろう。腕時計が見える。
十字架の模様が入った、キャメルのベルトが可愛い腕時計。
この手は、誰なんだろう──。
◇

