【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「しかし、他のは、どこにやったかなあ。すみれがどこかにやったかな」

 そう言って、スマホを取り出してお母さんに電話をかけ始めた。
 私も、安西さんに電話をかける。
 夜の十時半だったけど、なりふり構っていられない。

「すまん、あさぎ。母さんでもわからんそうだ」
「待って。……安西さん? 私」
『歯のありか、かい?』

 さすが安西さん。何も言わなくても通じてくれる。

『まって、何か金属の味がする……これは、缶だね、缶の中に入っている。……ぺっ、ほこりだ、もう何年も開けていない。カビの味もした。何か、物置か何かの缶の中にあるのでは』

「お父さん、物置! ほら、裏の(くら)じゃないかな」
「今からか? 雨も降ってきたし、あそこには電気がない。明日にしよう」
「だめだよ!」

 私は叫んだ。

「■■君の命がかかってるのっ! 今すぐ探さなきゃ」
「あさぎ、落ち着きなさい」
「落ち着いてなんかいられない!」

 何回か押し問答をして、やっとお父さんは折れてくれたんだよ。

「……懐中電灯を持ってくる。あさぎは、ほら、一杯でいいからご飯を食べなさい。何も食べてないだろう?」

 そう言って、私のお茶碗に白いご飯をよそった。

 ……。

 日付が変わって朝日が昇るころ。裏山でイチゴの葉っぱを見つけた。
 私は、これでようやく反魂術に必要な全ての物を見つけ出した。

『おめでとう、あさぎ。宝探し、あさぎの勝ちだね』

 ふと、安西さんの声が聞こえた気がした。



 私たちの大切な■■。
 そのどちらとも、脳機能(のうきのう)の回復が見込めないようだ、と病院のお母さんから連絡があったのは、それから二時間後のことだった。

 お母さんは泣いていたそうだ。電話を受けた、お父さんも。

 私も。