【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 それから私は病院はお母さんに任せて、タクシーで家に帰った。
 お父さんが待ちわびていたかのように出迎える。

「おかえり、あさぎ。お母さんに電話したんだが出なくてな。どうだった?」
「ごめん、ちょっと後で」
「おい、あさぎ、お父さんだって……おい!」

 お父さんには悪いけど、説明している時間が勿体(もったい)なかった。
 無視して家の物置を(あさ)った。でも。

『あさぎちゃん、それに■■。本当にごめんなさい』

 安西さんのお母さんのことばがよみがえった。
 お父さんも自分の■■が大変なんだと思い直した。

 だから、ポケットに仕舞っていた安西さんの書いたメモ書きを見せた。
 書いたのがあの鳥辺野(とりべの)神社の娘だと知ると、信じてくれたのか一緒に探してくれた。

 どれも見つけるのはとても難しかった。
 でも、私は(あきら)めなかった。
 ううん、諦めるなんて選択肢は私には無かったんだよ。

 だって、私の世界一大切な子の命なんだもの。

 宝探しのうち、草花は朝になってからにするとして、それ以外の物を探した。
 難航したのは、やはり歯だった。

「いちばん初めにぬけたのは、ほら、これだよ」

 お父さんはそう言って、小さな桐の箱から出してきた。
 ちっちゃな前歯。

 そうだ、■■君がカレーを食べた時に抜けたんだ。
 たしか、いつつになったばかりだった。