【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「あさぎちゃん、それに■■。本当にごめんなさい」

 私の隣に座っていた安西さんのお母さんが、深々と頭を下げた。

「うちの人がこんな時化(しけ)るときに釣りに連れていくなんて言わなければ」

 そういって、おいおいと泣き始めた。
 頭を下げたまま、両手で顔を覆って。

 安西さんと私は幼稚園の頃からの友人だ。
 もちろん、安西さんのお母さんのこともよく知っているよ。

 こうやって、泣く人じゃなかった。
 はつらつとしていて、快活(かいかつ)で。
 曲がったことが大嫌いで。
 小さいころ、安西さんとふたりしてよく怒られた。

 だから、私なんかに頭を下げてほしくなかった。

「いいんです、おばさんもおじさんも悪くないです」
「そうですよ、■■も、きっとそう言ってますよ」

 お母さんも彼女の肩をさすった。

 ああ、ああああ……。

 安西さんのお母さんのすすり泣く声は、津波となって私のヒビの入った心の中に、押し寄せ続けた。

 安西さんのお父さんは、いま警察の事情聴取(じじょうちょうしゅ)を受けている。
 ここに来ていないところを見ると、まだ終わっていないようだ。

 そして、私の大切な■■君と、たいよう君はこの扉の向こうだ。
 さめざめと泣く安西さんのお母さんを見ていたら、私も涙があふれてきた。

「安西さん、安西さん。どうしよう。■■君が、もし■■君が死んじゃったら、私……」
「そうだね。わたしも同じだよ」

 ぎゅっと抱きしめてくれる安西さんの手はとっても暖かくて。
 涙をこらえることなんてとても出来はしなかった。