【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 私の名前はあさぎ。
 町内にひとつしかない下町の小学校に通う五年生。

 みんなは五年生の時、どんなだった?
 もしくは五年生になってないみんなは、五年生になったらどんな風になりたい?
 きっときらきらしてるよね。
 世界が広くなって、出来ることが増えて、行ける所も増えて。

 私も、つい数時間前までそうだった。

 毎日が楽しくて、お父さんもお母さんも優しくて。
 そして私には世界でいちばん大切な■■君がいてくれた。

 ふたつ年下で、寂しがり屋なくせに妙に気が強くて。
 いつもけんかばかりしていた。

 でも、私はそれでもいいと思っていた。
 ありのままの■■君を、受け入れたかった。

 え、どうして過去形なのかって?

 それはね。
 今この扉の向こうにいて、生と死のはざまをさまよっているのが、私の大切な■■君なのだから。



 エレベーターのドアが案内のチャイムと共に開く。

「安西さん!」

 私は、エレベーターから降りてきた彼女の姿を見るなり、駆け寄ってすがりついた。

「■■君が、■■君が!」
「うん、そうだよね。電話で聞いてる……たいようは?」
「……おんなじ。意識不明だって……」
「そう……」

 トパーズみたいな色素の薄いブラウンの瞳。
 薄い色した髪の色。
 私の大好きな……安西さん。

 彼女は私を抱きしめながら、救急処置室のドアを見つめる。

 いつも、どんな時でも、彼女は冷静だ。
 とても同じ五年生には見えない。

 いつも不思議なことを言ったり、他の人には見えないモノを視たり、聞いたりできる。
 私も同じことができるけれど、彼女ほどじゃない。

 私の家がお寺であるように、彼女の家は神社で、きっとそれも影響しているんだろうな、と私は勝手に推察(すいさつ)している。