【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「口裂け女さん」
「んー?」

 帰り道。
 僕は手にしたインスタント写真に問いかけた。

「さっきの話、ほんとなの?」
「ああ、四十人食べたってやつ? ……ほんとうです」
「ううん」

 僕は首を横に振った。

「あなたの名前が瞳さんで、ひろみさんていう想い人がいて……ってやつ」
「……わからないの。もう何十回、何百回繰り返してきたから」
「そうなんだ」

 僕は思いを馳せる。
 繰り返し、繰り返し何度も、あの病室からバス停まで走っていた日のことを。

「あお君と同じだよ」
「え?」

 口裂け女さんは静かに笑った。

「あたしと同じ。大切なことを忘れてしまって、それが何なのか思い出せない」

「どういう……こと?」

 がらがら、と引き戸が開く音がして、お母さんが顔を出した。
 いつの間にか家に着いていた。

「もう、あおったら、また夕方にそんなに出歩いて」
「あ、うん」

 クリームシチューのいい匂いがして、僕は玄関の戸をくぐって。

 口裂け女さん──瞳さんの大切な助言を、忘れた。