【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 目を覚ますと、ベッドの上だった。
 あれえ、ここはどこだろう。
 僕の部屋は布団だから、ここは自分の部屋じゃない。
 それに、薬っぽい匂いがする。

 ここは──病院?

「わー、かくまってー!」

 突然、赤いワンピースのお姉さんが部屋に駆け込んできた。

「え、口裂け女さん?」

 でも、マスクもしてないし、口も裂けてない。
 と思ったら、僕のベッドの向かいにはもう一つベッドがあって、その下に滑り込んだ。

「もう、瞳さん、また婦長さん怒らせたの?」

 むくり。
 ベッドから体を起こす男のひとがいた。
 十四歳くらいかな。
 きぃ子ちゃんより年上に見える。

「えへへ、ごめんごめん! かくまってぇ」

 口裂け女さんはふりふりとお尻を振ってベッドの下に隠れた。

 何が、起きてるんだろう。
 どうして僕はここにいるんだろう。
 唖然(あぜん)としていると。

『ここはね、茜坂がん総合病院。四十年前に閉院した、あたしの、家』

 振り返ると、口裂け女さんが僕の枕元に立っている。

『あの子は……私の初恋のひと。大好きだった』

「ほら、バスが来ちゃう、行こう!」
「うん!」

 ふたりは窓を開けると、中庭に飛び出して駆けて行った。

「がん総合病院って」
『うん。あたしが白血病(はっけつびょう)。あの子が、脳腫瘍(のうしゅよう)

 そして、とても寂しそうに笑った。

『この日が、最後だった。あたしは血を吹いて倒れて、そのまま……。あの子も、二か月後に亡くなった』