【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「にひひ。ボク、えっちだね!」
「うわぁ!」

 振り向くと口裂け女さんが真後ろに立っていた。

「え、あれ、写真の中にいたんじゃないの?」
「ふっふーん、あたしは妖力強めだからサ、多少は歩き回れるんだよーだ」

 真っ赤なワンピース。
 腰まであるながい黒髪。
 白いリボンが可愛い麦わら帽子。
 花のチャームがおしゃれな白いサンダル。

 今みたいにマスクをしていれば、お化けになんて見えない、本当にきれいなお姉さんだ。

「ね、ちょっとだけ、あたしに付き合ってよ」
「う? うん……」

 別に夏休みの宿題全部終わったし。
 家に帰ってもまだ誰もいないし。

「やったー、あお君とデートだねえ!」

 僕より年下の女の子みたいに、ぴょんぴょんはしゃぐお姉さんを見ていると、なんだか拍子抜けして、ほっこりしてきた。

「そんなにうれしいの?」
「当り前じゃない、大好きな男の子と──」

 え。
 今なんて?

「……違った。大好きな男の子に『そっくりな』子と、だったねえ」

 そういうと、口裂け女さんは僕の手を取って歩き出した。



「ついたついたー」

 他愛もない会話──たとえば普段きぃ子ちゃんと何しているの、とか学校の事とか──をしていたら、口裂け女さんが目的地の到着を宣言した。

 あかねざか びょういんまえ。

「あーあー、こんなにボロボロになっちゃって」

 口裂け女さんは錆びだらけのバス停を、愛おしそうに撫でた。

「もうあれから四十年経つのかあ」
「え、口裂け女さんそんなに年上なの?」
「瞳、だよ」

 口裂け女さんは恥ずかしそうに、下を向いてそう告げた。

「あたしのほんとの名前。ここの病院で──死んだんだ。四十年前に」
「病院……」

 僕はバス停の裏の(やぶ)をのぞいてみるけれど、何かあるようには見えない。

「おいで、あお君。連れて行ってあげる」
「どこへ?」
「ふふ、あたしの、『家』にね」