【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「やった、終わったー!」

 んー。背伸びをひとつして、僕は夏休みの宿題に勝利宣言をした。
 ふう、二時間半もかかったぞ。

 時計を見る。
 夕方五時十五分。

 さて、今日もきぃ子ちゃんとこに行こう。
 ……あれ?

 気が付くとお化けたちは写真に戻っていた。

「まったく、遊ぶだけ遊んで……」

 そうぼやきながら、床に散らばったたくさんの写真を拾い集めてると。

「みんなサ」

 急に後ろから声をかけられて、ものすごくびっくりして振り返る。
 声をかけてきたのは口裂け女さんだった。

「妖力の低いお化けたちだから、あんまり外に出てられないんだよ」
「びっくりしたよ、お化けかと思った」
「ふふふ」

 口裂け女さんはなんだか寂しそうに笑った。

「お化けだからね……今は」
「今は?」

 僕はそこが少し気になって、問いかけた。

「ボク、サ。一緒にお姉さんとお散歩しない?」
「えー」

 僕は反射的に(しぶ)った声を出す。

「これからきぃ子ちゃんに会うんだけど」
「うん……そか、そだったね」

 口裂け女さんはにっこり。
 笑顔で答えた。



「あー、楽しかった!」
「ふふ、今日のきみは冴えてたね」

 きぃ子ちゃんが笑う。

「いつもでしょー。いつも僕は勝負に強いのー」
「はいはい、可愛いやつめ」

 二歳年上のお姉ちゃんはくしゃくしゃと僕の髪をなでる。

 鳥辺野(とりべの)神社の前。
 きぃ子ちゃんと別れる所だ。

 あーあ。もうここにきてしまった。
 きぃ子ちゃんと別れるのは毎回とてつもなく寂しい。

 山に夕日が沈む。
 ふたりの長い影が見えなくなっていく。

「じゃあ、ね」

 きぃ子ちゃんはとんとんと階段を上っていく。
 あ。
 意図(いと)せず、本当に意図せず見えてしまった。

 今日は白かあ……。