【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 そんな食卓で、お母さんが首をかしげる。

「転校生かしら?」
「ううん、わかんない。けど……友達がその子のこと話してて」
「ふーむ」

 お父さんがお味噌汁から顔を上げる。いつになく真剣なまなざしだ。

「聞いたことがあるな」
「私も。……どこかで聞いたことあるのよね。いつかしら」

 やっぱり、お父さんとお母さんじゃわからないか。
 僕はテレビのニュースに目をやる。
 九州地方のローカルニュースが流れている。

『ご覧ください、とっても気持ちよさそうです』

 この猛暑の中、福岡にある動物園のシロクマに、お誕生日のお祝いとして大きな氷がプレゼントされたらしい。

 時計を見る。
 七時四十七分。

「やっば、もう八時になっちゃう」
「あら、まだ夏休みよ」

 そう言って、お母さんがたくあんを小気味良(こきみよ)い音を立てて食べながら、笑う。

「ううん、お友達と約束してるんだった!」
「あら、とうまくん?」

 とうまとは幼稚園から一緒だ。でも押しが強くて自己中で、僕は大嫌いだった。

「違うって、あいつとは遊びたくないの。きぃ子ちゃんだよ」
「きり子?」
「ううん、きぃ子ちゃんだよ。えと、たしか神社に住んでるんだ。鳥辺野神社に」

 僕はちゃんと答えたはずだけど、お父さんは目を見開いている。

「鳥辺野神社の……きり子だって?」
「?」

 どうしてそんなに怪訝(けげん)な顔をするのかはわからなかったけれど、とりあえずきぃ子ちゃんが待っているので、シンクにお茶碗を運んだ。

「行ってきまーす!」
「あ、待ちなさい」

 楽しい楽しい夏休みは、まだ真ん中。
 待ちきれないなあ! 今日も僕はきぃ子ちゃんと遊ぶんだ!