【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「あさぎ……」

 あさぎ。あさぎ。
 お鈴ちゃんは「ちゃん」と言っていた。女の子の名前だろうか。

 あさぎちゃん。あさぎさん。
 苗字は何だろう。なに、あさぎというんだろう。
 歳は? 歳は何才だろう。

 初めてその名前を「感じた」のは座敷童くんに会う前だ。
 小さな自分が、必死になって呼んでた気がする。
 てことは、年上か。同い年か。
 年下はないような気がする。

 僕を知っていて、年上か同い年で、女の子の……あさぎさん。



 遠い海原。
 とどろくような潮騒(しおさい)の音は、大きくうねって防波堤に打ち付ける。

『こらー、二人とも。けんかしちゃあ、だめよー!』



 ……?
 いま、何か思い出せそうになった……?
 僕と……もうひとり、呼んでた……?
 それに、何か聞こえなかったか?
 あれは、波……?
 海か?

 教えて、あさぎさん。
 もう一度、もう一度だけでいいから。お願い──。

 ……。

 だめだ、懐かしいような、聞いたことのあるような、そんな気はするのだけれど、それ以上の何かを思い出すことが出来ない。

「あお、ごはんだ、起きなさい」
「あ、お父さんが読んでる。朝ごはんだ。みんな、またね」
『うん、あたしたちは大丈夫だけどサ、ボク、無理しちゃだめよ?』

 口裂け女さんが優しく声をかけてくれる。
 僕は写真に写った大切なお友達たちをリュックサックにいったんしまって、一階に下りた。