ぴたり。
一つ目小僧たちはまるで初めからずっとそうであったかのように、動きを止めた。
「怒った」
「怒った」
「あさぎが怒った」
「にげろ、にげろー」
そう、ひそひそと話した後、蜘蛛の子を散らしたように、あっという間にいなくなってしまった。
「あ……」
「なーにやってんだか」
僕とふたりきりになったきぃ子ちゃんがあきれたように言う。
「せっかく楽しく遊んでたのに」
「……みんなしてひとりねらいばっかり。楽しくなんてなかったよ」
「あお君の頑固ものめー。いったい誰に似たのかしらね?」
そう言うと、きぃ子ちゃんは不意にインスタントカメラを構えた。
……目つきが怖い。
「あの……」
びっくりした。急に後ろから声を掛けられた。
「さっきは、どうもありがとう」
見ると、お鈴ちゃんがもじもじと、手を後ろで組んでこっちを見ている。
「鈴ね、運動が大の苦手で。いっつも最初に当てられちゃうの」
「ああ」
気にしなくていいよ、そう告げると。
「男子相手でも、物怖じしないで。かっこよかったよ、あさぎちゃん」
ん?
「今なんて……」
「あさぎちゃんって、かっこいいよね。女の子なのに、男の子にも負けないで」
「え、えと、あさぎって」
ぱしゃり。じー。
「はい、あお君。……これでもう、寂しくないでしょ」
きぃ子ちゃんはいつもよりそっけなくそう言うと、一つ目小僧のお鈴ちゃんの写真を押し付けるように渡して来た。
『あさぎちゃん。あさぎちゃん。また遊ぼう……ね? 鈴は、あさぎちゃんのこと大好きだから』
お鈴ちゃんの声は、僕の頭の中でいつまでも乱反射して鳴り止まない。
◇
このお話を読んでるみんなは、自分のことをどこまで知っているかな?
全部知ってる?
うん、それはいいね。幸運なことだね。
でも、もしも君の家族が。大切な人が。友達が。
自分の知らない自分のことを話してきたりしたら?
全く知らないことを、知っているかのように話すのを見たら、どう思うだろう。
実はそれは、とても怖いことかもしれない。
でも、大丈夫。
ひとつづつ記憶のふたを開いていけば。
最後には希望が残されていることを、きっと知るだろうから。
一つ目小僧たちはまるで初めからずっとそうであったかのように、動きを止めた。
「怒った」
「怒った」
「あさぎが怒った」
「にげろ、にげろー」
そう、ひそひそと話した後、蜘蛛の子を散らしたように、あっという間にいなくなってしまった。
「あ……」
「なーにやってんだか」
僕とふたりきりになったきぃ子ちゃんがあきれたように言う。
「せっかく楽しく遊んでたのに」
「……みんなしてひとりねらいばっかり。楽しくなんてなかったよ」
「あお君の頑固ものめー。いったい誰に似たのかしらね?」
そう言うと、きぃ子ちゃんは不意にインスタントカメラを構えた。
……目つきが怖い。
「あの……」
びっくりした。急に後ろから声を掛けられた。
「さっきは、どうもありがとう」
見ると、お鈴ちゃんがもじもじと、手を後ろで組んでこっちを見ている。
「鈴ね、運動が大の苦手で。いっつも最初に当てられちゃうの」
「ああ」
気にしなくていいよ、そう告げると。
「男子相手でも、物怖じしないで。かっこよかったよ、あさぎちゃん」
ん?
「今なんて……」
「あさぎちゃんって、かっこいいよね。女の子なのに、男の子にも負けないで」
「え、えと、あさぎって」
ぱしゃり。じー。
「はい、あお君。……これでもう、寂しくないでしょ」
きぃ子ちゃんはいつもよりそっけなくそう言うと、一つ目小僧のお鈴ちゃんの写真を押し付けるように渡して来た。
『あさぎちゃん。あさぎちゃん。また遊ぼう……ね? 鈴は、あさぎちゃんのこと大好きだから』
お鈴ちゃんの声は、僕の頭の中でいつまでも乱反射して鳴り止まない。
◇
このお話を読んでるみんなは、自分のことをどこまで知っているかな?
全部知ってる?
うん、それはいいね。幸運なことだね。
でも、もしも君の家族が。大切な人が。友達が。
自分の知らない自分のことを話してきたりしたら?
全く知らないことを、知っているかのように話すのを見たら、どう思うだろう。
実はそれは、とても怖いことかもしれない。
でも、大丈夫。
ひとつづつ記憶のふたを開いていけば。
最後には希望が残されていることを、きっと知るだろうから。

