【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「だめだよ、あさぎ」

 その子は、抑揚(よくよう)のない口調で言った。

「あの術は反魂術。呼び戻すためには必ず贄(にえ)がいるんだ」
「わかってる……もちろんわかってるよ」

 あさぎと呼ばれた「私」は食い下がる。

「だから今回もわたしが負けさえすれば」
「だめよ、それはだめ」

 静かに、落ち着いた口調で「私」は告げる。

「私の命を、贄にするの。それで、おしまい」

◇

 夏の夕暮れ、神社の境内。
 セミが、しゃわしゃわ鳴いて耳をくすぐる。
 熱を帯びた風が、ほっぺたをなでる。

 そこに、子供たちの声がひびく。
 全部で十二人。
 とてもにぎやかだ。

 でも、この中でヒトであるのは僕ときぃ子ちゃんのふたりだけ。

 一つ目小僧たちはじつに上手にボールを投げる。
 僕ら人間と何ら変わらない。
 だからとても楽しかった。

 ううん、ひとりねらいしてくる、たけるたちなんかよりよっぽど良かった。
 と、思っていたら。

「いたっ」

 ちょっぴり太った、三つ編みの一つ目小僧の女の子が当てられて外野に出る。
 あれ?
 この子、さっきも当てられていなかっただろうか。

「えへへ、また当たっちゃった」

 その子は外野に出ると、しゃがみこんでしまった。
 どうやら、ドッヂボールはそんなに上手ではないらしい。

 その後もいくつか試合を進めたが、いちばん最初に当てられるのは、やっぱりその子だった。

「おいー、お鈴、またかよー」
「しょうがないよ、お鈴はどんくさだからさ」
「そうそう、どんくさ、どんくさ」
「えへへ、ごめんねぇ」

 そして次の試合。始まって十秒でお鈴と呼ばれたその子に当てられた。

「ごめん、ごめん」

 明らかにひとりねらいされているのに、お鈴ちゃんは寂しそうに笑うだけ。
 なぜだか、どうしてだか。
 無性に腹が立った。

「やめろよ、ひとりねらいばっかり!」

 僕は大きな声で相手チームの一つ目小僧たちに叫んだ。