【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 ぼーん、

 大きな柱時計が鳴った。短い針は七を指している。

「あ、もう時間だ」

 ぼーん。

「どこいくの」

 ぼーん。
 座敷童くんが聞いてきた。

「そろそろ帰ろうかなって」

 ぼーん。

「かえる?」

 どこへ?
 そう言ったように聞こえた。

「うちに、だよ」

 ぼーん。

「こんどいつくる?」

 ぼーん。

「んー? いつだろ」
「もうこないの?」

 ぼーん。

「わかんないな」
「あさぎちゃん」

 ……ぼーん。
 時計の、鐘の音が止まった。

「こんどいつくるの」

 ふすまが──開かない。

「ぼくはずっとまってた」
「座敷童君?」

 きぃ子ちゃんが声を掛ける。
 いつになく抑揚(よくよう)のない声で。

「まってた」
「今日はここまで、だからね?」

 彼女はそう言って、インスタントカメラを構える。

「ずっと、ずっとまってたもん」
「きぃ子ちゃん、ふすまが開かない」
「もう、いやだ」
「だめだよ? 座敷童君」
「ねえ、あさぎちゃん──」

 ──さびしいのは、もういやだ!

 確かにそう叫んだように聞こえた。
 座敷童くんがものすごく尖った歯が何本も並んだ口を大きく開いて、飛びかかってきたから、最後まで聞こえなかったけど。

「うわぁっ!」

 僕は目を固くつぶった。やられるっ──。

 ぱしゃり。じー。

「はい」

 きぃ子ちゃんはそう言ってインスタントカメラから現像(げんぞう)された写真を抜いた。

「ほら、これでもう寂しくないでしょ。だから、ね。泣かないで」