僕の名前は月森あお。
 学校では、いつもけんかばかりすることで知られてる。
 お友達はひとりもいない。

『寂しいからって、ひとを叩いてはだめよ。僕も仲間に入れて、きちんとそう言わなきゃ』

 寂しい、寂しい。
 ことあるごとに先生は、そう言うんだ。

 ううん、違う。
 全然違う。

 先生に、僕の何がわかるっていうんだろう。
 わかりっこない。

 僕は寂しくなんかない。
 だって、だって僕には、いるから。

 世界一のお友達が、いるから。

 ぱしゃり。じー。

「やっほ。きみ、来たね」
「もう、撮る時は撮るって言ってよう、きぃ子ちゃん」

 いつも通る鳥辺野(とりべの)神社の鳥居(とりい)の陰から、いつものみたいにインスタントカメラのシャッターを切る。

 トパーズみたいな色素の薄いブラウンの瞳。
 吊り目がちで勝気に見えるけど、本当は冷静で大人っぽい。
 琥珀色(こはくいろ)したポニーテールの髪は、夕日を浴びてきらきら光って、僕は大好きだ。
 グレーの(えり)とリボンをあしらったセーラー服は、とても(まぶ)しいんだよね。

 僕の最高のお友達、きぃ子ちゃん。
 ふたつ年上、中学一年生。

 彼女がこうして居てくれるから、僕は寂しくなんかない。

「ほら、いこう?」

 きぃ子ちゃんが手を伸ばす。
 適度に日焼けしていて健康的な、そのお姉さんの手を取って、僕は今日も逢魔が時(おうまがとき)の町を駆ける。