【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「じゃんけん……ぽん!」

 僕ときぃ子ちゃんがパー。座敷童くんがグー。

「じゃあぼくがオニねー」

 二十畳くらいの広さの、畳の居間。
 お線香のようないい香りがする。
 電気は通じてないらしくて、吊り下げられた二重丸の蛍光灯は光らない。

 きぃ子ちゃんがローソクを持ってきてくれていて、部屋の四隅に火を灯してくれた。
 けれど、五時過ぎの夕刻の中にあって部屋は仄暗い(ほのぐらい)

 そんな薄暗い部屋の柱時計の下まで座敷童くんは走っていった。

「だーるーまーさんがー……」

 三人だけで遊ぶ、火点し頃(ひともしごろ)のだるまさんが転んだ。

「ころんだ!」

 オニの子の前では動いてはならない。
 動けばたちまちのうちに命を失うのかもしれないのだから。

「だーるーまーさんがー」

 そろり、そろり、ぬき足さし足。
 オニの子の背中を目指す。

「……ころんだ!」

 ローソクの光がゆれる。
 おっとっと。
 僕の体もゆれそうになる。

「うごかないか……だーるーまーさんがー」

 夕闇の廃屋の禁じられた遊び。
 今夜もきっと、眠れない。

「ころんだ! あ! あおくんうごいた!」
「あーあ、まけちゃった。じゃあ、今度は僕がオニね」
「あおくんのまけ、あおくんのまけ!」

 僕は座敷童くんがいた場所まで歩いて、
 柱時計の下で壁に頭をつける。
 かちっ、かちっ。

 古い古い、振り子時計だ。
 こうして近くで耳を澄ますと、歯車の音がよく聞こえる。

 そうだ──。
 この音には聞き覚えがある。