【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 着いたのは、上町のはずれに建つ古い空き家。
 築五十年は優に経っているだろうか。

 小豆色(あずきいろ)の壁に、みかん色した屋根瓦(やねがわら)
 この地域では別段珍しくない見た目を身にまとっている。

 でも、誰かが定期的にお手入れしているのだろうか。
 古い建物なのに、壁も窓もぴかぴかだ。
 裏手が雑木林だけどどこか明るく見えて、怖く感じることもない。

 玄関は板で塞がれているけれど、庭に面した窓のうち一枚、鍵が開いていて、中に入ることが出来た。

 とててて。

 小さな子が走る音がする。
 驚いた。
 まだ人が住んでいたなんて。

「きぃ子ちゃん、ここって……」
「ふふ、何度も連れられて来ているよ? 覚えてないかい?」
「え?」

 ──ほら、おいで。いつもここだけ開いてるの。
 ──ここ、どこ?
 ──おともだちん家。
 ──こわいよ。
 ──こわくないよ、私がついてるから。
 ──こわいよう。

 とんとん。
 きぃ子ちゃんが、ぼーっとしている僕の肩をたたく。

「ほら、今日のお友達だよ」

 彼女の方を向くと、小さく顎で指すので、そちらを見た。
 その視線の先には。

 おかっぱ頭。赤い着物。白い足袋(たび)
 男の子にも女の子にも見える五歳くらいの子が立っている。

「ぼくとあそびたいの?」
「座敷童君。だるまさんが転んだしましょ」

 少しも(おく)することなくきぃ子ちゃんが手を差し伸べた。
 にい。その子は彼女の手を取ると、歯を見せて笑った。