【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「なにそれ」

 僕は思わず怪訝(けげん)な声を出してしまった。

「それ、誰のこと?」

 僕、写真に撮られて喜んだこともないし、そもそも写真が趣味のひとは家族に居ない。

「そか」

 きぃ子ちゃんは小さく返事をする。

「覚えていない、か」

 なんだかとても寂しそうだ。

「ねえ」
「なんだい」

 でもこの時の僕は、そのことを見落としてしまったんだよ。

「いつも何して待っているの?」

 だから今でも後悔してる。

「知りたい?」

 くすりと笑うその裏の悲しみに、気づけなかった、そのことに。

◇

 逢魔が時(おうまがとき)の山の道。
 きぃ子ちゃんが半歩先を歩く。
 僕と手をつないで。

 といっても、恋人みたいな感じじゃない。
 恋人出来たこと、まだないけど。
 どちらかというと、弟とお姉ちゃんだ。
 なんだかとっても、不本意だけど。

 そういえば。

 僕ってば、きぃ子ちゃんの何になりたいんだろう。

「僕ってさ」
「なあに」

 吊り目がちな目を僕の方に向けて、優しく返事をする。

「きぃ子ちゃんの、なに?」
「……ぷっ」

 あっはははは!
 きぃ子ちゃんはつないだ手を放して、口に手を当てて大笑いした。

「なんだよう」
「だってきみったら、おかしーったら、ないよ」

 ひひひ。ひーっ。
 まだ笑ってる。……なんだか、ムカついた。

「気になっただけなのに。もういいよ」

 僕はいまだに爆笑するそのお姉さんを置いて歩き始めた。
 その時。

「彼氏」

 ──っ!
 えっ?
 僕が思わず振り返ると。

「って言ってほしかったかい?」

 あははは。
 また笑い出した。
 くっ!
 このドSめ!
 男の子の純心をもてあそびおって!

「そうだねえ。……おとうと? かな?」

 ……はあ。
 僕は大きな、それは大きなため息を吐いた。

「……やっぱ、そうなるよね……」

 僕があからさまにしょげていると、ドSお姉さんは続けた。

「でもね。ほんとはね、わたし、きみのことが──」