【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

「なにそれ」

 僕は思わず怪訝(けげん)な声を出してしまった。

「それ、誰のこと?」

 僕、写真に撮られて喜んだこともないし、そもそも写真が趣味のひとは家族に居ない。

「そか」

 きぃ子ちゃんは小さく返事をする。

「覚えていない、か」

 なんだかとても寂しそうだ。

「ねえ」
「なんだい」

 でもこの時の僕は、そのことを見落としてしまったんだよ。

「いつも何して待っているの?」

 だから今でも後悔してる。

「知りたい?」

 くすりと笑うその裏の悲しみに、気づけなかった、そのことに。



 逢魔が時(おうまがとき)の山の道。
 きぃ子ちゃんが半歩先を歩く。
 僕と手をつないで。

 といっても、恋人みたいな感じじゃない。
 恋人出来たこと、まだないけど。
 どちらかというと、弟とお姉ちゃんだ。
 なんだかとっても、不本意だけど。

 そういえば。

 僕ってば、きぃ子ちゃんの何になりたいんだろう。

「僕ってさ」
「なあに」

 吊り目がちな目を僕の方に向けて、優しく返事をする。

「きぃ子ちゃんの、なに?」
「……ぷっ」

 あっはははは!
 きぃ子ちゃんはつないだ手を放して、口に手を当てて大笑いした。

「なんだよう」
「だってきみったら、おかしーったら、ないよ」

 ひひひ。ひーっ。
 まだ笑ってる。……なんだか、ムカついた。

「気になっただけなのに。もういいよ」

 僕はいまだに爆笑するそのお姉さんを置いて歩き始めた。
 その時。

「彼氏」

 ──っ!
 えっ?
 僕が思わず振り返ると。

「って言ってほしかったかい?」

 あははは。
 また笑い出した。
 くっ!
 このドSめ!
 男の子の純心をもてあそびおって!

「そうだねえ。……おとうと? かな?」

 ……はあ。
 僕は大きな、それは大きなため息を吐いた。

「……やっぱ、そうなるよね……」

 僕があからさまにしょげていると、ドSお姉さんは続けた。

「でもね。ほんとはね、わたし、きみのことが──」