【完結】きぃ子ちゃんのインスタントカメラ

 やられる──っ!
 僕がとっさに前に手をやって顔をかばった、まさにその時。

 ぱしゃり。じー。

「よしよし、間に合ったね」

 きぃ子ちゃんがインスタントカメラで僕を写していた。
 花子さんは何処にもいなくなっていた。

 どっ、どっ、どっ、どっ。

 辛うじて爆発をまぬがれた僕の心臓が、まだ暴れまわっていて手が付けられない。
 僕が何も言えずにいると、

「ねえ、いいからさ、このドア、開けてくれるかい?」
「立てないんだ」
「はは。きみ、案外怖がりなんだ?」

 むっ。腹が立った。
 けれど、抜けた腰はなかなか復活してくれない。

「もう、仕方ないねえ」

 きぃ子ちゃんはドアをよじ登って、個室に飛び降りて入った。
 そして、現像(げんぞう)したトイレの花子さんが封じられた写真を手渡して来た。

「ほら、これでもう寂しくないでしょ。だから、ね。泣かないで」
「泣いてないし!」

 強がってみたが、きぃ子ちゃんには通用しないようだ。

 まったく、とんでもない人だ。
 お化けとかくれんぼなんてさせて。

 今だって、男子トイレに飛び込んできて……。
 飛び込んで?

 そういえば、さっき、見えちゃったなあ。
 ……白、かあ……。



 これが、きぃ子ちゃんとの初めての遊びであり、彼女との初めての「勝負」だったんだよ。

 え? ぶっ飛びすぎ?
 はは。そうかもね。
 でもこの時もらった写真は、今も大切なお友達の、最初のひとり。

 人ってね。
 本当につらくて悲しいとき、何故だか世界がとても綺麗に見える時があるよ。

 そんな時は、自分の心の声に、耳を澄ませてみて。
 ほら、聞こえるでしょ。

 どっ、どっ、どっ、どっ。

 どんなにつらくても、苦しくても、生きることをやめない君の命の声が。

 だから、ちょっとだけでいいから、信じてあげて。

 君はひとりじゃない。
 世界を美しく見せてくれる友達が、君のいちばん近くにいる。

 そのことを。