双子の「無能な方」だから生贄にされたはずが、竜族の花嫁として迎えられました

「シェイラのそんな声を聞ける日が来るなんて」

「や、恥ずかし……」

「もっと聞かせて」

 笑みを含んだ声で囁いたイーヴが、口を塞ごうとしたシェイラの手を取ると、今度は指先に唇を落とした。爪の先に何度もキスをしながら、彼はじっとシェイラを見つめる。

 金色の瞳は、今まで見たことがないほどに蕩けていて、背筋がぞくりとした。

「……っ」

 握られた手のぬくもりも、見つめる瞳の強さも、どう受け取ればいいのか分からない。

 決して嫌ではないけれど、身体が熱くなって頭がぼうっとして何も考えられなくなる。

 唇から飛び出しそうな声を堪えて、シェイラは唇を噛みしめた。



 全ての指に口づけを終えると、イーヴの唇はまた首筋に戻ってくる。

「イーヴ……もぅ、無理」

 息も絶え絶えに訴えると、身体を起こした彼が小さく笑った。

「うん、今日はここまで。少しずつ慣れていけばいい」

 ぽんぽんと頭を撫でられ、途端に彼の纏う空気が一変する。先程までの艶めいた雰囲気はなくなり、イーヴはいつもの穏やかな表情に戻っていた。

 そのことにホッとする気持ちと、少しだけ残念に思う気持ちが混じりあう。

 この程度の触れ合いで、こんなにも鼓動を乱してしまうことになるとは思わなかった。

 確かに段階を踏んでいくことは大事だなと、シェイラはため息をついた。