すきとおるし




「受け入れたって言っても、やっぱり意味は分かってねぇよ。同い年だったし男同士だったし、ふたりで色々話もしたし」

「ゆんと花織だけで、どんな話をしてたの?」

「仕事とか恋愛とか色々。おまえらだって女子だけで話してたろ」

「そうだったね……」

「大まかに言えば、おまえらの女子トークと変わんねぇよ。仕事や恋愛で悩む二十代の赤裸々雑談」

「へえ、ゆんと花織が。楽しそう」

「いや、楽しくねえ。花織が主にしていたのは、ネガティブ恋愛話だ」


 ゆんはもう一度ため息をついて、わたしの隣にしゃがむ。ふたりで並んで墓石を見上げると、やけに冷たい風が吹いて、後頭部で結んだ髪がさらさらと揺れた。
 それを合図に、ゆんが言う。


「花織は、おまえが好きだった」

 知り合ってから一番、穏やかな声だった。

「……知ってる」

 答えたわたしの声も、ここ数年で一番穏やかだった。

「……知ってた?」

「花織が死ぬ数日前、ボイチャ中に」

「おまえの返事は?」

「してない。ただ返事を、先延ばしにした」

「そっか……」

「でも返事をしないまま花織は死んで、そのあと線香をあげに行ったとき、初美さんに封筒を渡された」

「封筒?」

「中には花織からの手紙が入っていた。花織の部屋の机に置いてあったんだって。花織ったら、住所も本名も知らないわたしに手紙を送ろうとしてた」

「花織らしいっちゃあ花織らしいな」

 手紙の内容は、ラブレターと言ってもおかしくないようなものだった。
 わたしのどこを好きになったとか、付き合ったらこんな特典があるよってアピールだとか、デートで行きたい場所だとか……。ラブレターというよりも企画書のようだったけれど。真面目で優しい花織らしいと思った。


「手紙を読んで、花織との未来を想像した。優しい花織はきっと、記念日やイベントを忘れない良い恋人になっただろうし、良い旦那さんにもなったと思う」

「だろうな」

「でも、いくら想像しても無駄。花織は死んだ」

「もし生きてたら?」

「え?」

「花織がもし死んでいなかったら、おまえはあいつと付き合ったか?」

 もし死んでいなかったら、なんて。いくら話したところで意味はない。花織は死んでしまったのだから。

 でもこの質問の答えは「ノー」だ。

「好きな人がいた。だから、最初から断るつもりだったし、ちゃんと断るべきだった」

 ゆんはふうっと息を吐いて「その相手とはどうなんだ?」と問う。
 わたしは首を横に振る。