お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜

「は、は、はじめまして。私、三光銀行ミッドタウン支店の支店長、佐藤敏夫です。も、申し訳ございません。先程のは、言葉のあやと言いましょうか……」


冷や汗をかいているカッパおやじは、ハンカチで頭上の皿を拭き始めた。俺と大和は思わず顔を見合わせ、笑いをこらえるのに必死だった。


「あなただけではありませんね。あなたの娘さんも、私の娘に関する虚偽の情報を社内メールで流しましたよね? さらに、私の娘をストーキングするかのように写真も撮りましたよね? 

これは犯罪ですよ。伊集院先生に法的措置をお願いします。

それと、あなたのような方がいる銀行とは今後一切ビジネスをしたくありません。現在、私の秘書があなたの銀行で手続きを進めているはずです。

三光銀行の会長にも連絡が行っていると思います。

私の会社、妻のクリニック、娘の会社、そして我が家は、あなたのせいで三光銀行から手を引くことになります。

我が家と私たちの会社が手を引いても、そちらには影響はないでしょうね? 何せ我が家は、どこの馬の骨かもわからない人間ですから」


微笑みながら淡々と伝えるジョセフさんに、カッパおやじの焦りはさらに増した。

追い打ちをかけるように、涼介がこちら側の条件を伝え、麻茉が出禁となっている店舗のリストを渡す。佐藤麻茉は相変わらず自分の爪ばかり見て何やらブツブツと呟いている。

こいつ、今の状況を理解しているのか。

カッパおやじからリストを受け取った麻茉は、初めて自分の置かれている状況に気づき、ギャーギャーと喚き始めた。


「どうして私が出禁なの? ねぇ、パパ、おかしいわよ。何とかしてよ!」


先ほどの発言を訂正する。こいつは自分が置かれている状況を全く理解していない。

フーッ、俺はこういう女が本当に苦手だ。

涼介がこめかみに青筋を立てて怒っている。こいつもバカな女が大嫌いだからな。


「佐藤麻茉さん、先ほど私があなたに説明したことを聞いていませんでしたか? あなたは、なぜ今日ここに呼ばれたのかわかっていますか? 

もう一度説明した方がよろしいですか?
それとも、佐藤さんが娘さんに説明していただけますか? 

しっかりしてください。あなたからの反省や謝罪がなければ、法的措置を進めることになりますので、その点をご理解ください。

それでは、また5時にいらしてください」


涼介は半ギレで説明を行い、佐藤親子に退室を促した。




全員でランチを取りながら、これからのことについて話し合った。

ランチの後、仁、彰人、京兄、悠士兄はそれぞれ会社と病院に戻った。

戻る前に、京兄から別室での出来事を聞いた。佐藤敏夫が美愛ちゃんを誹謗中傷した際、圭介叔父さんとジョセフさんがすぐに会議室へ向かったが、その後、圭衣ちゃんが荒れ狂ったらしい。


「おい、カッパおやじ。あんた、私にケンカを売ってんの? うちの可愛い美愛ちゃんに、なんてことを言ってくれてんのよ? 

美愛ちゃんはね、あんたのクサヤ娘よりも何千倍も綺麗でいい子なんだからね! 

あんたのその頭の皿、かち割ってやるから待ってろよ!」


殴り込みに行こうとする圭衣ちゃんを、大の男たち四人が笑いをこらえながら止めにかかったらしい。しかも、あの香水の匂いが強い佐藤麻茉のことを「クサヤ娘」とは。

大和の言う通り、花村姉妹は面白い。

この話を俺と一緒に聞いていた大和が呟いた。


「さすが、僕の圭衣ちゃん!」


--「僕の」?

昨日から感じていたが、大和は圭衣ちゃんに気があるのではないか。

それに、圭衣ちゃんは基本的に俺たち王子のことを役職名か下の名前に「さん」をつけて呼ぶのに、なぜか大和だけは呼び捨てだ。

やはりこの二人には、何か特別なものがあるな。