騙すなら墓場まで




 だけど、何より私の心を抉ったのは──。


「ねぇ、伊月さん。こんなの何かの間違いよね? お父さんがこんな──」


 私は伊月さんに縋ろうとして、足が縫い付けられたように動けなくなった。



 どうしてそんな、道端の石でも見るような目をしてるの?



 意志の強そうな、それでいて私を穏やかに見つめてくれた瞳には何も映っていない。

 憤怒も、軽蔑も、憐憫も。

 何一つ見つからなかった。


「それじゃ、あとは頼んだ」


 伊月さんは二人に言い放つと、私を振り返ることなくその場を去ろうとした。


「待って! 伊月さん!」


 弾かれたように私は駆け寄ろうとして、警官たちに阻止されてしまった。それにドレスで上手く動けなくて、彼とも距離はどんどん離れていく。


「とにかく、ご同行願います!」

「一度、着替えていただけますか?」


 警官の制止も聞かず、伊月さんの姿が見えなくなるまで私は必死で手を伸ばし続けた。